福沢諭吉・変貌する肖像

本書は福沢諭吉が生前から批判され、没後は評価は如何に変遷してきたかを考察しようとしたものである、著者は小川原正道、慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程修了、現在は慶応義塾大学法学部教授、専門は日本政治思想史

存命期の論争ー学者職分論から修身要領まで

1幕末・維新期の福沢諭吉、幕臣としての挫折、在野への決心、2学者職分論争、学者は民間にあるべし、「官」学者から批判、3民選議員論争、明六社での論議、反時期尚早論、4国会論争、英国型議会政治へ、ルソー流国会構想、5官民調和論争、官民調和論、官民調和論批判と徳富蘇峰、物質文明の輸入者、6徳育論争、政府の徳育政策、「徳育如何」、徳育論議、7修身要領論争、教育勅語と修身要領、井上哲次郎の修身要領批判、修身要領の課題、

死去ー「福沢先生哀悼録に見る文明の先導者

1福沢の死と主要新聞、蘇峰と桜痴、読売・朝日・万諜報、2知識人の評論、三宅雪嶺の評論と「瘦我慢の説」、「太陽」と「中央公論」、キリスト教者の反応、仏教とジェンダー、3友人からのメッセージ、旧友の声、同志と医師、4慶応義塾の門下生・学生の声、福沢「コンパス」論・制御、学生の反応、

忘却から批判へー大正期から太平洋戦争まで

1往生の余韻のなかでー1900年代、林毅陸と大隈重信、「中央公論」特集、2慶応義塾の内と外―1910年代、鎌田栄吉の熱弁、顕彰から忘却へ、田中玉堂の登場、福沢批判の声、3固定化する「乖離」ー1920年代、慶応義塾関係者の語り、低調な福沢論、4「立憲主義者」としての福沢ー1930年代、慶応義塾を支えるために、「国権論者」福沢の強調、福沢ルネッサンス、立憲主義と国権主義、文部省と検閲、マルクス主義の観点から、和辻哲郎と木下尚江、5試練の時代ー1940年代、日米開戦前夜の福沢論―慶應義塾、日米開戦前夜の福沢論ー京都、日米開戦と福沢攻撃・弁護、戦時下・丸山眞男の福沢論、徳富蘇峰の攻撃、小泉信三の反論と「傷」、

華麗なる復活ー連合軍占領と横溢する賛美

1占領の開始と民主化政策のなかでー慶応義塾からの声、「独立自尊」の再登場、検閲の実態、慶応義塾内の福沢再評価、2慶応義塾外の福沢論、羽仁五郎と「原則」、自由と民主教育の象徴、3福沢研究の進展、慶応義塾の福沢研究、戦後・丸山眞男の福沢論、4検閲終了後の福沢論、福沢賞賛論の系譜、左派からの援護射撃、5福沢批判者たち、家永三郎からの挑戦、遠山茂樹の登場、「福沢諭吉選集」の刊行、

「脱亜論」の主唱者としてー戦後歴史学からの批判

1占領の余韻の中でー1950年代の慶應義塾関係者の語り継がれる福沢、「福沢諭吉全集」の刊行、2賞賛・批判・実証ー1950年代の知識人たち、継承される賞賛、左派からの攻撃、実証主義的研究の探求、福沢の文章、3「脱亜論」者への道ー1960年代、「福沢諭吉」岩波新書の刊行、ライシャワーと丸山眞男、「予言者」としての福沢、アカデミズムの中の福沢論、労働者軽視への批判、社会思想史からの攻撃、「脱亜論」者福沢、「脱亜論」の発見と拡散、4「通説的理解」の登場ー1970・80年代、高橋誠一郎と富田正文、羽仁五郎と岡義武・追及される「脱亜論」、ひろたまさきの批判と整理、「脱亜論」の位置、

まとめ

存命期の論争ー学者職分論から修身要領、死去ー文明の先導者、忘却から批判ー大正期から太平洋戦争、華麗なる復活ーGHQと横溢する賛美、脱亜論の主唱者ー戦後歴史学からの批判で構成、福沢評価の変遷をたどり、福沢の実像を浮かび上がらせた、

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA