映像作家・宮崎駿

宮﨑駿監督のアニメーション映画のいくつかは国内外の文学作品を下敷きにつくられている、本書は宮﨑映画の独自性の考察に翻案の手腕と視覚的叙述を着目して解釈をしている、著者は米山みゆき、名古屋大学大学院博士課程を経て現在は専修大学文学部教授、専門は日本近現代文学・アニメーション文化論、文学博士、

1視覚的叙述と「ハウエルの動く城」、なぜ汽車が登場するのか、行間の可視化-文学作品から映像作品へ、

2翻案する宮﨑駿ー「魔女の宅急便」その1、翻案とは何か、物語の冒頭-想像力と聴覚・視覚、キキがコリコの町に降り立つ、魔女の血、
3解釈と再創造ー「魔女の宅急便」その2、キキはどのように町の人々と交流するのか、翻案における想像力ー普遍性と独創性、原作に準拠し発展させるー解釈と再創造、

4原作に準拠しつつ添加した脚色と実写映画版・北米版ー「魔女の宅急便」その3、「赤ん坊のおしゃぶり」の継承と再配置、実写映画版の応答ー童話世界の復権とアニメーション映画への応答、実写映画の独自性、北米版はいかに変更されているのかー原作の召喚、

5宮崎駿版「人魚姫」-「崖の上のポニョ」と地政学・その1、舞台を公表しないこと、映画舞台の地政学、

6非常時ライフラインの描出ー「崖の上のポニョ」その2、なぜ宗介の家はライフラインが整備されているのか―「光」を担う宗介、夏目漱石をめぐってー「門」、オフィーリア、「リトルマーメイド」との比較からーリサと宗介のフェアネス、「魚」から見た人間世界の相対化、フェアネス・「魚」からみた人間世界の相対化、ひまわりの家にこだわる、

7歩行への夢想と「災害ユートピア」の描出ー「崖の上のポニョ」その3、水没はなぜ描かれたのか―飛翔の夢から歩行の夢へ、災害ユートピアの視点ー災害後の相互扶助、ルッキズムの問題点ー宗介がポニョを受け入れる理由、

8「原作」の種としてのロケーション・ハンティングー「天空の城ラピュタ」その1,「漫画映画」の復活というキャッチ・コピー、

9宮﨑監督版「貝の火」ー「天空の城ラピュタ」その2,漫画映画における既視の風景―「お姫様抱っこ」と、エスコートヒーローのパロディ、呼び起こされるチェリノブイリと宮沢賢治、

10宮崎駿監督と「翻案」-「ハウルの動く城」における階段・荒地の魔女の「老い」、長い階段と「王と鳥」ー階段の「翻案」、ネガとしての荒地の魔女ー原作に準拠した脚色、「かわいいあばあちゃん」と翁童文化、

11「ハウエルの動く城」と戦争ー「ハウエルの動く城」その2、ソフィーの造型の違いは何をもたらすのか、物語への加筆と混乱⁻戦争の加筆、宮崎監督と戦争の記録ー傷跡を読む、

12「となりのトトロ」と結核・ナショナルトラストの系譜ー「風立ちぬ」「コクリコ坂から」、「となりのトトロ」の位置づけー「失われた日本の農村」というファンタジー、「どんぐりと山猫」からの「翻案」、「結核」の諸相ー「宮沢賢治」からの「翻案」と「風立ちぬ」、「ナショナル・トラスト」の継承ー「となりのトトロ」から「コクリコ坂から」まで、

補1「千と千尋の神隠し」ー柏葉幸子「霧のむこうの不思議な町」を参照して、「霧のむこうの不思議な町」から「千と千尋の神隠し」へ、宮沢賢治の世界から、労働というテーマーなぜ食べることが描かれるのか、

補2カレル・ゼマンと宮﨑駿監督ージュール・ヴェルヌを通じた想像力の共有、チェコアニメの巨匠―カレル・ゼマン、映像の魔術師、「盗まれた飛行船」ー読書空間の想像力、ゼマンのトンデモ・メカと「魔女の宅急便」、「崖の上のポニョ」と「前世紀探検」、カレル・ゼマン博物館、ージュール・ヴェルヌを通じた想像力の共有、

まとめ、本書はジブリのアニメーション映画の講義の内容を書籍化したものである、学術的には異端であり、研究方法論は今でも確立されておらず、試行錯誤を重ねている状態にある、

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