古典と呼ぶべき文明論を読み、これからの文明論を構想する手がかりをつかむ、著者は呉座勇一、国際日本文化研究センター助教、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、専攻は日本中世史、著書「戦争の日本中世史」他、と與那覇潤、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、専門は日本近現代史、「心を病んだらいけないの」で小林秀雄賞、他
概略
梅棹忠夫「文明の生態史観」ーヨーロッパVSユーラシアは宿命なのか、いまなぜ「文明論の復権」か、アカデミアの内輪の相撲はもう要らない、文明は国家を相対化する、ウクライナ戦争を予見した世界地図、マルクス主義がつまづいた空白を埋める、世界共通の理論は本当にあるのか、ヒットの理由は安心・脱力史観、恵まれた戦中派が持つフラットな視点、エマニュエル・トッドに勝る中国論、日本の知識人は儒教社会が大好き、ユーラシア社会のコアは正教一致、冷戦後に変貌したイスラムとインド、21世紀の欧米は第二地域化に向かう、日本のモデルは意外に東南アジア、文明論弊害は乗り越えられる、宮崎市定「東洋的近世」ーGAFAの資本主義は世界を中国化する、日本生まれのグローバルヒストリー遊牧民は破壊者でなく交易者、ユーラシアにも封建制は実はある日本は今でも科挙以前の中国、意外に競争があった平安時代の貴族、身分制と暴力の応酬はトレードオフ、公金を吸い上げるNPOは近世中国の胥吏、税さえ払えば住民を把握しない究極のネオりべ、AIや仮想通貨を煽る人の愚かさ、GAFAの独占がもたらす中国化する世界、北宋期に流産した主権国家の外交、国境を引かない帝国のブラックホール、循環史観の起源はローマ帝国の衰亡、日中戦争を素朴と文明で評価できるか、原点回帰で共通する朱子学とトランプ、原理主義のリセット願望が世界史を動かす、ユーラシアに寛容な帝国は甦るか、井筒俊彦「イスラーム文化」ー滅びない信仰の源泉は天皇制も同じ、イラン革命という歴史観の転換、聖俗一致で共同体を作るイスラーム、文明の本質は部族主義の克服、日本とイスラームが対極で・中国が真ん中、西欧の啓蒙主義がイスラーム世界を生む逆説、改宗を強制しないのは寛大なのか、絶対他力とプロテスタンティズムの類似、江戸時代はコーランと逆の聖俗一致、宗教の牙を抜く禅宗の「通俗道徳」、鎌倉新仏教の虚像と現実、浄土真宗はイスラームになりそこねた、ムハンマドのメッカ帰還は究極の徳政令、宗教の相互扶助で食べていけるムスリム、シーア派はイスラームの本居宣長、ホメイニーを支えたイランの皇国史観、大川周明と天皇思想の危険な影、網野義彦の中世史がイスラーム理解のヒントに、高坂正堯「文明が衰亡するとき」ー冷戦期から「トランプ」を予見したリアリズム、いまも現役の国際政治学の遺産、シュンペーターが見た商人国家の限界、冷戦下で模索した日本の立ち位置、ヴェネツィアに投影された吉田ドクトリン、専制を抑える合議の制度化、乗り越えられない外交史家は貴族政がお好き、もし高坂が北朝鮮との交渉を見たら、古代ローマは軍事では後進国、日本は中世からシーパワー未満、先進国を衰えさせる原理主義、冷戦に敗れつつあったアメリカ、リアリズムの敵は悪でなく愚かさ、トランプ現象を予見した慧眼、ベトナム戦争と「近代原理主義」の逆説、米国の空洞化を追いかけた平成日本、乗り越えられない人口の難題、軍事なき海洋国家は幻想なのか、いま衰亡論から学ぶべきこと丸谷才一「忠臣蔵とは何か」ー事前に革命の芽を摘むJエンタメの起源、明るくなった江戸時代のイメージ、史実と物語の入れ子構造秩序への不満を解消する擬似革命、敗戦の記録と一体だった「怨霊史観」、近世の武士は矛盾した存在、幕末から戦後を貫くデスパレートな情念、無思想な日本を動かす感情の共有、安倍元首相暗殺まで忠臣蔵で解釈する人々、為政者を時の運と捉えた中世のモデル、徳川綱吉以来の「意識高い系」揶揄、歌舞伎もライトノベルも停滞社会の古典、同調圧力と「冷笑系」の永遠の争い、歴史に支えられた個人でいるために、西洋化しない文明論について知りたい方におススメ、
感想
今は未曾有の事態で,過去は参考にならないのではないか、古典と呼ぶべき文明論を取り上げ対話によりディスカッション、文明論の構築を試みた、
まとめ
梅棹忠夫「文明の生態史観」、宮崎市定「東洋的近世」、井筒俊彦「イスラーム文化」、高坂正堯「文明が衰亡するとき」、丸谷才一「忠臣蔵とは何か」を取り上げ対話、もう西洋化しない世界を見通した、