本書は豊穣な王朝文学を論じた随筆、著者は中村真一郎、東京大学卒業、福永武彦らと新しい詩運動「マチネ・ポエティック」結成、1947年「死の影の下で」で戦後文学の一翼を担う、本書のほか平安期文学ついての著作も多い、1997年没、
紫式部と「源氏物語」
紫式部の肖像、現実と小説・宮廷生活、恋愛と好色の描写、小説と現実・日常生活に触れる喜び、世界と文学・世界の文学遺産、
「源氏物語」の世界
作者の環境と生い立ち、「源氏物語」の小説観、平安朝の貴族社会「後宮」、平安朝の下層社会「下町」、野の宮・文芸サロン、学者グループ・外戚政治、「須磨・明石」の特異性・貴種流離譚、「源氏」における「死」の美学、日常生活、宇治十帖・孫の世代、物語の外の世界・男性の世界「大鏡」、
「源氏物語」の女性像
1藤壺―永遠の女性、葵の上ー六条御息所、2空蝉ー夕顔、末摘花ー源典侍、3紫の上ー明石の上ー女三宮、4愛人ーその様ざまなタイプ、5内大臣の娘たち、6宇治の三姉妹、
「竹取物語」と幻想
「竹取物語」はおもしろいか?写実主義、幻想小説、幻想の意味、日本的幻想、現実と超現実、
王朝のエッセー
「土佐日記」・日記体小説、「蜻蛉日記」・女性の苦悩の歴史、「更科日記」・一生を回顧、「枕草子」・独立した精神、「方丈記」・悲観的一生、「徒然草」・人生研究書、
「狭衣物語」の再評価ー二つの変奏曲
王朝末期の人々の感受性を表現、源氏物語に次ぐ名声、近代に入り眠ってしまった、作品をめぐり論争を通じて本当の古典となる、古典とは「生きている」
「堤中納言物語」
幸運な短編小説集、サロン性、社交性は徹底している、
「今昔物語」ー武士を頂点とする庶民の世界
新しい担い手による「民話的世界」
「とはずがたり」による好色的恋愛論
1父性的恋愛、2感傷的恋愛、3社交的恋愛、4情熱的恋愛、5趣味的恋愛、
平安朝の女流文学
1「源氏」について無用な饒舌、2「源氏」の女たち、3「源氏物語」蛍の巻・紫式部の小説観、4全訳したウェイレーと「源氏物語」、5ひとつの清少納言・モラリスト、6王朝女流日記・蜻蛉日記と更科日記、7王朝の女流作家たち・藤原氏から外れた下級貴族、8デカダンスの今日性‣過度の感傷性と過度の唯美性、9「浜松中納言」讃、夢と転生、10王朝文学と現代・「源氏物語」と「枕草子」の対立、
まとめ
源氏物語を中心とする王朝文学についてその時々に求めに応じて書いた物を書き改めたもの、源氏物語、竹取物語、エッサイ、狭衣物語、堤中納言物語、今昔物語、とはずがたり、平安朝の女流文学について論じる、