本書は主な路線ごとに漱石の汽車旅を辿った、漱石先生と向かいに座り車窓風景を見ながら近代文明の行方を語りたい、著者は牧村健一郎、早稲田大学卒業、朝日新聞入社、昭和史・書評・夏目漱石担当、
東海道線
1三四郎の上京、筑豊鉄道「三四郎駅」、九州鉄道から東海道線まで―三四郎のルート、三四郎の宿、「亡びるね」-駅の風景で描かれる近代、2東海道線、西南戦争と東海道線、東海道ルートと中山道ルートの競合、日清戦争直前の鉄道敷設状況、「難関」逢坂山トンネル、大津事件と東海道線、すれ違う漱石と伊藤博文、明治の列車風景ー赤松麟作「夜汽車」、3興津、最初の遠出・興津行、鉄道が分けた境内,子規の果たさぬ夢、
御殿場線・横須賀線
1御殿場線、天下の嶮を迂回、漱石を出迎えに、国府津をめぐる「青年」と「三四郎」、ハコ乗り取材を受ける漱石、三島駅から下土狩駅へ、御殿場線の栄枯盛衰、鉄道と食、明治の食堂車、大町桂月の紀行、諸説ある駅弁の始まり、2横須賀線、特別な路線、鎌倉行き、「こころ」と鎌倉、是公と鎌倉行、喪章写真の真実、芥川と横須賀線、「旅行案内」と呼んだ時刻表、
市内電車・甲武鉄道
1市内電車、東京をつなぐ市電ネットワーク、日比谷焼き討ち事件と市電、漱石の妻君・大会に参加す、坊ちゃんの再就職先、市電に乗る三四郎、「彼岸過迄」の停留所、小川町交差点の観察、2甲武鉄道、汽車とカブトムシ、ああああ・もう少しの間だ、鉄道自殺をなぜ取り入れたか、日露戦争後・増加する鉄道自殺、中央本線の主要駅の変化、3総武鉄道、青年漱石の房総紀行、舟運銚子の近代化、房総鉄道・芥川の夏休み、
日本鉄道・信越線
1日本鉄道、東北を貫く日本鉄道の発足、ともに時鳥・子規と漱石、みちのくに旅立つ子規、交通の中心地・宇都宮、松島へ、紳士は尻の痛きもの、北上駅と子規の句碑、一夜にして帰京、2信越線
、妻君携帯で講演会に、碓氷峠越えの工夫、日本最初の幹線電化、鉄道文化遺産・めがね橋と変電所、軽井沢での逍遥、松崎天民と邂逅、長野を起点に、
関西私鉄・山陽鉄道
1箕有電軌と南海鉄道、箕面行、小林一三の箕面・宝塚開発、和歌山講演と南海鉄道、浜寺に如是閑を訪ねる、私鉄王国関西、五高の教え子・高原操のその後、2山陽鉄道、坊ちゃんの四国行き、寝台車に食堂車、私鉄山陽鉄道の斬新、パイオニア実業家・中上川彦次郎、漱石が乗った山陽鉄道、
九州鉄道・伊予鉄道
1九州鉄道、炭鉱と埠頭を結ぶ鉄道、新婚旅行、帰京の経路、帰国時に熊本へ立ち寄る、日露戦争後の鉄道国有化問題、門司駅から門司港へ、或る列車、2伊予鉄道、軽便第一号、伊予鉄道、豆相人車鉄道から熱海へっつい鉄道へ、大正の軽便鉄道ブーム、塩原の軽便鉄道、絶筆「明暗」の湯河原行き、内田百聞の湯河原訪問、岩手軽便鉄道と宮沢賢治、
ロンドン
ロンドンの地下鉄、水上を行く汽車のごとし、産業革命への批判、「坊ちゃん」のターナー島、モネの「サン・ㇻザール駅」、縺れあう線路、シールド工法のロンドン地下鉄、スコットランドへの旅、スコットランドに学んだ科学者たち、もう一つのスコットランド旅行、ボーア戦争パレードに巻き込まれる、
シベリア鉄道・南満州鉄道
1シベリア鉄道、「気を付けねば」、日露開戦まで、工事が進むシベリア鉄道、不機嫌な漱石、2日露戦争、鷗外の戦争詩「扣鈕」、漱石の戦争詩「従軍行」、軍事に組み込まれる鉄道、兵士輸送と鉄道、遼陽会戦と熊本、「草枕」、鉄道で結ばれる戦争、「猫」執筆開始と旅順陥落、文豪たちの日露戦争、日露戦争小説「趣味の遺伝」3南満州鉄道、満州・朝鮮半島への旅、満州に来る人びと、20世紀初頭の風俗史「満韓ところどころ」、改軌と技術力の投入、南満州鉄道会社の設立、「満韓ところどころ」の旅程、ヤマトホテルに泊まる、温泉に入る、奉天へ、伊藤博文暗殺の舞台、軍用軽便鉄道安奉線、鴨緑江の鉄橋、近づく大陸、
胃潰瘍と汽車の旅
胃病をかこちながらの旅、車体の揺れに苦しむ、「門」連載終了と「修善寺の大患」、大患後の「思い出すことなど」、鉄道も死因の一つか
まとめ
東海道線、御殿場・横須賀線、市内電車・甲武鉄道、日本鉄道・信越線、関西私鉄・山陽鉄道、九州鉄道・伊予鉄道、ロンドン、シベリア鉄道・南満州鉄道、胃潰瘍と汽車の旅で構成、本書は前著「旅する漱石先生」刊行したが、漱石に縁が深い鉄道に特化し鉄道旅を再現したものである、