仏教に「浄土思想」がある、浄土思想は物語により成り立っている、本書は浄土宗の歴史を物語の視点から描いたものである、著者は岩田文昭、京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学、ルーヴァン大学高等哲学研究所留学、現在は大阪教育大学教授、専攻は宗教学・哲学
物語の力と浄土思想
１経典への向き合い方、仏教とは何か、思想変遷の局面、２浄土三部経、阿弥陀仏と浄土三部経、無量寿経の法蔵説話、阿弥陀経の極楽浄土、観無量寿経の性格、
中国の浄土思想
１観無量寿経の解釈、中国の浄土教、観無量寿経の流布、王舎城の悲劇、観無量寿経の主たる内容、善導独自の解釈、２善導の神秘的体験と生涯、善導の夢、善導の生涯とその伝承、善導の臨終、３浄土思想の大成者、称名念仏の称揚、西方浄土、４善導の布教方法、大衆参加の法要儀式、念仏興行のための台本、阿弥陀経の写経、浄土変相図、
平安浄土思想から法然へ
１源信の往生物語、日本への浄土思想の伝来、源信の生涯、源信についての伝説、「往生要集」の地獄と極楽、「往生要集」の念仏、念仏行者の看取り作法、２日本浄土思想の元祖法然、法然に由来する宗派、法然の浄土宗開宗、三大法難、「選択本願念仏宗」、３法然の神秘的体験と法然伝、三昧発得、法然伝の発生、法然と女性信者、熊谷次郎直実の物語、
法然門下の諸思想
１念仏と自由意志、法然門下の教義の相違、恩寵と自由意志、法然と自由意志、浄土教における自由意志、法然の諸行理解、浄土宗の諸行理解、２證空の生涯と思想、證空の生涯、證空と天台教学、證空の仏教分類、證空における否定と肯定、３当麻曼荼羅の流布、当麻曼荼羅との出会い、当麻曼荼羅の構図と布教方法、浄土宗と中将姫説話、
親鸞の浄土観と物語論
１親鸞の生涯、法然との出会い、法難と関東教化、親鸞の晩年ー善鸞事件、２親鸞による浄土の非神話化、親鸞の諸行理解、親鸞の浄土観、物語の発生の根源、自然法爾、３親鸞の夢と親鸞伝、六角堂の夢告、芝居としての王舎城の悲劇、「親鸞伝絵」の制作、親鸞の聖人化、宗祖親鸞、
二十世紀の新たな物語
１近角常観の実験の物語、真宗の僧・近角常観、近角常観の回心、近角の回心物語の構造・浄土宗の物語、回心のモデルとしての物語、明治期の「実験」の流行、「歎異抄」流布の背景、２阿闍世コンプレックスとブッダ、古澤平作の阿闍世コンプレックス、世俗的な母子和解の物語、手塚治虫「ブッダ」、
物語は現代に続く
小さな物語と大きな物語、東日本大震災後の傾聴活動、ダイナミックな物語論に向かって、
まとめ
物語の力と浄土思想、中国の浄土思想、平安浄土思想家から法然へ、法然門下の諸思想、親鸞の浄土観と物語論、二十世紀の新たな物語、物語は現代に続くで構成、本書は物語の視点から浄土思想を現代に至るまで追求したものである、