本書はオットーの浮き沈みに富んだ60年の生涯を追いつつ、今日のヨーロッパの原型が形作られた「長い10世紀」という一つの時代の中に位置づけたものである、著者は三佐川亮宏、北海道大学大学院文学研究科博士課程中途退学、現在は東海大学文学部教授、専攻はドイツ中世史、
北の辺境ザクセン―カロリング朝の遺産
1ザクセン人貴族の世界、オットーの誕生、古ザクセン人の社会、ザクセン人の起源説話、テューリンゲン戦争、カール大帝のザクセン戦役、祖先の記憶、2大フランク帝国の分裂、東フランク王国の成立、フランク人とザクセン人の分国、大フランク帝国の最終的分裂、3東カロリング家の衰微、バーベンベルク・フェーデ(コンラート家との私闘)、若き日のハインリヒ、二人の妻、レヒフェルトの悲劇・ハンガリーとの戦いに大敗、
少年時代の世界-オットー朝の始まり
1ハインリヒ一世によるオットー朝の樹立、新国王コンラート一世、最後のフランク人国王、ハインリヒ国王の推戴、オットー朝宮廷伝説、フランク人からザクセン人への王権移転、東フランク王国の再統合、ロートリンゲンの奪還、2オットーの結婚、弟ハインリヒの誕生、926年ヴォルムスの宮廷会議、スラヴ人女性との恋、ウエセックス王家の花嫁、王国非分割の原則、3リアーデの勝利、対ハンガリー人戦の準備、リアーデの戦い、「祖国の父・強大な支配者にして皇帝」、父の死、
支配者への道ー若き国王の修行時代
1国王登位、アーヘンの国王戴冠式、フランク的伝統、神権的君主観念、母との確執、2大公たちと弟の叛乱、エーベルハルトの蜂起、タンクマルの最期、エーベルハルトとハインリヒの同盟、ビルテンの戦い、ビルテンのモーゼ、ブライザッハの裏切り劇、大司教の名誉、叛乱者たちの死、叛乱の収束、3王妃エディットの死、再びハインリヒの乱、ハインリヒの服従儀礼、兄弟の肖像、西フランク王国の内紛の調停、妻の死、
絶望の淵からー父と子の確執
1「暗黒の世紀」のイタリア、「イタリア皇帝」の時代、「娼婦政治」女傑マロツィア、ユーグからベレンガーリオ二世へ、バヴィーアの助祭リウトプランド「報復の書」、2第一次イタリア遠征、若き息子リゥドルフの挫折、アーデルハイトとの結婚、怒れるコンラート、アウクスブルクの王国=教会会議、3リゥドルフの乱、蜂起の始まり、父と息子の「契約」、マインツ包囲戦の長期化と息子と直談判を決意、叔父と甥、レーゲンスブルク包囲戦で撤収、ハンガリー人の侵入、孤立したリゥドルフ、最後のレーゲンスブルク攻防戦、リゥドルフの服従儀礼、
レヒフェルトの戦いー西欧世界の覇者として
1レヒフェルトの戦、アウクスブルク包囲戦、レヒフェルトの死闘、義息コンラートの戦死、再び「祖国の父にして皇帝」、2首都なき王国を旅する国王、マクデブルク大司教座計画、マインツ大司教ヴィルヘルム、巡幸王権、帝国教会、西欧カトリック世界の覇者として、息子リゥドルフの死、
ローマを目指してー皇帝戴冠への道
1第二次イタリア遠征、ローマからの特使、ロシア伝道、ローマへの道、サン・ピエトロ教会の皇帝戴冠式、ローマ皇帝権の救済史的地平、最後の世界帝国、2混迷する教皇庁、「マクデブルク問題」、教皇ヨハネスの裏切り、ヨハネス罷免裁判、ヨハネスの最期再びの教会分裂、祖国への帰還、
エルベを超えてーキリスト教伝道の使命
1家族の絆、西欧の家長として、オットーの破門、第三次イタリア遠征の開始、2最後のイタリア遠征、混乱の収捨と南イタリア情勢、「マクデブルク問題」の解決、マグデブルグ大司教座と異教徒伝道、オットー二世の求婚使節、「コンスタンティの―プル使節記」、ニケフォロス暗殺事件、皇后テオファーヌ、3晩年の皇帝、皇帝のベッド、クヴェトリーンブルクの復活祭、良きキリスト教徒としての死、
オットーの遺産ー神聖ローマ帝国とドイツ人
オットー大帝、ドイツとは何か、ドイツ人のローマ帝国、ドイツ人のねじれたアイデンティティー、「ローマ」との決別、
まとめ
北の辺境ザクセン、少年時代、支配者の道、絶望の淵から、レヒフェルトの戦い、エルベを超えて、オットーの遺産で構成、オットーが生きた時代は諸侯の力が国王を上回った、ハンガリーの侵攻・兄弟息子の叛乱・3度のイタリヤ遠征を経て皇帝戴冠、神聖ローマ帝国の基礎が築かれた、