JSミルは多様なテーマに関心をもった思想家、本書は中軸となる道徳と政治を評伝の形式で取り上げる、著者は関口正司、東京都立大学社会科学研究科博士課程単位取得退学、現在は九州大学名誉教授
ミルの生誕から少年時代
1幼年期のミル、ミルの誕生、ミル「自伝」の特異性・父親、幼少期の教育、執念時代の教育、積極的行動力の弱さ、少年期に受けた道徳的影響、フランス滞在、Ⅱ若きベンサム主義者ミル、ベンサム「立法論」、少年ミルの使命感、改革者としての活動、ミルの言論活動の内容、東インド会社への就職、
「精神の危機」とその後の模索
1「精神の危機」、「精神の危機」の発端、「罪の自覚」とは何か、ミルの自己分析、自然な結びつきとは、自己分析の背後にあったもの・ロンドン討論協会、宿命論の呪縛、「危機」からの脱却、Ⅱ模索の歩み,「危機」の経験から得たもの、新しい人生理論、感情の陶冶、ハリエット・テイラーとの出会いと「マンスリー・レポジトリ」へ投稿、静穏な精神と行動意欲との両立、宿命論の克服、Ⅲ新たな展開、演繹的推論、演繹的推論による政治理論、修正の必要性、マコーリーによる批判、帰納と演繹、二種類の演繹法、経済学・力学的合成の方法と政治学、科学とアート・実践的規則の体系、政治における複数目的の追求、
思索の深まり
1政治理論の探求、社会の安定と存続、「時代の精神」、「コールリッジ論」、トクヴィルとアメリカのデモクラシー、文明・文明化、国民教育と国民性格学、Ⅱ社会科学方法論の到達点、方法論探求の継続、合理的認識の前提、基本法則と経験法則、社会科学における中間原理、国民性格学、その後の展開、Ⅲ1840年代から50年代、「経済学原理」、「二月革命擁護論」、実践的技術における目的論の三区分、社会的孤立と病気、著作の構想、ハリエットの死、
「自由論」
1説得の書としての「自由論」、主題の設定、自由をめざした闘いの歴史、現代における自由への脅威、多数の専制とエリート専制、二つの脅威に共通する問題点、自由原理の提示、文明社会の成人という限定、自由の価値を擁護する議論の必要性、政治道徳への訴え、Ⅱ思想と討論の自由、「精神の危機」とその後の模索、自由の価値の評価基準、無謬性の想定、生き生きとした確信の必要性、部分的真理のあいだでの対立、公的討論の真の道徳、Ⅲ個性と自由、真理と幸福、個性の社会的価値、Ⅳ自由原理の注意点、義務と自由、Ⅴ自由原理に基づかない自由、競争試験、個人間の同意、誤った自由の主張、自由原理を根拠としない自由、政治の領域での自由、
「代議制統治論」
1政治理論の方法と目的、実践的政治理論のあり方、統治形態の評価基準、二つの基準、基準を満たす理想的統治形態、政治における自由の価値、代議制統治を可能とする条件、イギリスはすでに代議制の統治体制である、結局どんな選択肢なのか、Ⅱ議会のあり方、業務の遂行と統制の区別、制度の消極的欠陥、制度の積極的欠陥、Ⅲ選挙資格のあり方、選挙の平等、選挙資格の拡大、複数投票制、秘密投票への反対、Ⅳ執行機関のあり方、Ⅴ政治的統一性に関する問題、責任の所在の一本化と明確化、行政担当者の任用方法、地方の統治機構、Ⅴ政治的統一性に関連する問題、国民的一体性、国民国家を超えた統治体制、連邦制、インドの統治体制、
「功利主義」
1二つの道徳概念、公共道徳と個人倫理、個人の行為と二つの道徳との関係、Ⅱ幸福について、事実としての幸福、幸福と行為との関係、有能な人間にとっての幸福、二つの道徳の区別が必要な理由、Ⅲ義務付けと正義、サンクション・動機付け、義務の感情の自然な基礎、内的サンクションがもつ危険性、Ⅳ正義とそれ以外の人間的価値、正義の心理的起源、正義とサンクション、
晩年のミル
著作活動、没後に公刊された3つの著作、実践的活動、庶民院議員への選出、ロンドンとアヴィニョン、ミルの最期
まとめ
ミルとの議論で二つの自由を考えた、憂慮したのは自由が恣意的な支配により損ねられることで、重要なのは区別ではなく言葉の意味を深く理解することである、