近代美学入門

美や芸術の常識は17世紀から19世紀の時代にヨーロッパで成立した、本書は成立の過程を明らかにしたものである、著者は井奥陽子、東京芸術大学美術研究科博士後期課程修了、現在は日本学術振興会特別研究員、専門は美学・思想史・とくにドイツ啓蒙主義美学

芸術ー技術から芸術へ

1建築は芸術か、2本章のポイント・「芸術」言葉の変遷、3アート=技術(古代~中世)、3-1アートは技術の意味だった、テクネ―とアルス、アルス・ロンガ,ウイータ・ブレウィス、発展ー模倣の技術、3-2文芸・音楽と絵画・彫刻・建築は別グループだった、自由学園、機械的技術、絵画・彫刻・建築の位置づけ、アーティストとは誰か・職人、3-3=芸術ではなかった、4アート=芸術、4-1「芸術」概念成立の土壌、新旧論争、詩画比較論、美術アカデミーの創設、文芸・音楽と絵画、彫刻・建築の共通点、4-2新グループ「美しい含められた諸技術」、そしてアートへ、新しいグループ名の探求、ペローとバㇳゥー、発展ー美しい自然の模倣、形容詞と複数形が抜けたアート、補足ー日本語の「芸術」と「美術」、5何が芸術で・何が芸術でないのか、美しい諸技術には何が含められたか、芸術の条件ー「~は芸術か」という問いをほどく、近代の「芸術」概念を相対化する、

芸術家ー職人から独創的な天才へ

1独創的な芸術家は世界を創造する、2本章のポイント・芸術家のの存在、3芸術家をとりまく環境と作者の地位の変遷、3-1注文に従って制作する職人(古代~初期近代)、パトロネージによる制作、「作者」概念の不在、画家のサインから見る意識変化、3-2独創的な作品を創造する天才(18世紀以降)、ギルドやパトロネージからの独立と芸術の公共化、模倣から表現へ(ロマン主義の芸術)、天才としての芸術家像、神格化された芸術家、4芸術家にまつわる概念の変遷、4-1ジーニアス(天才)の人間化、ゲニウス(守護神・守護天使)、インゲニウム(生得的な素質・能力)、ゲニウスとインゲニウスの混同、4-2クリエイションとオリジナリティの人間化、神のクリエイション、芸術家のクリエイション、オリジナルとオリジナリティ、5作者と作品の関係をどう捉えるか、ケルン大聖堂にて、作者と独創性の偏重、近代的「作者」の乗り越え、作者の死のその先に、

美ー均整のとれたものから各人が感じるものへ

1美は感じる人の中にある、2本章のポイント・美の自立、3美の客観ポイント(古代~初期近代)、3ー1美は幾何学の原理に従っていると考えられた、古代ギリシャ語の美、宇宙と美の原理としての数(ピュタゴラス】、幾何学者としての神(プラトン)、プロポ-ション理論、補足ー複雑なものと単純のもの(多様の統一・光の美学)、3-2人体のプロポーションを求めて、美しい身体の追求、古代ギリシャ・ローマの人体比例論、ルネサンスの人体比例論、補足ー黄金比、4美の主観主義(18世紀以降)、4-1伝統からの離反、古典理論への懐疑、プロポーション理論の否定(バーク)主観主義と客観主義の狭間で(ヒューム)、4-2客観主義との調停、道徳や味覚のとの類似(道徳感覚派)、美の主観性と普遍性(カント)、5美の概念とどのように付き合うのがよいか、美の自立性と唯美主義、芸術の自立性と「芸術のための芸術」、美は絶対的で自律的な価値か、

崇高ー恐ろしい大自然から心を高揚させる大自然へ

1崇高なものが登山の本質だ、2本章のポイント・崇高、3山に対する美意識の転換、3-1山は恐ろしく醜い場所だった(古代~初期近代)、危険で近づきがたい存在、崇拝と忌避の対象、神の罰としての醜悪な山(山岳論争)、3-2登山による印象の変化(17世紀以降)、ペトラルカの登山、グランド・ツアー、理論と経験の衝突(バーネット)、歓喜に満ちた戦慄(デニス)、崇高概念との交叉、4崇高概念の転換、4-1言葉の崇高(古代~17世紀)文体としての崇高、ロンギノスの「崇高について」、ロンギノスの再発見と再解釈(ボアロー)、4-2自然の崇高(18世紀以降)、自然体験とロンギノス「崇高について」のリンク、自然の崇高の確立(バーク)、人間理性の崇高さ(カント)、芸術は圧倒的なものとどのように関わることができるか、崇高概念の復興と変容、現代アートと崇高(抽象表現主義)、描くことができないものに向き合う、

ピクチャレスクー荒れ果てた自然から絵になる風景へ

1絵になる景色を探す旅、2本章のポイント・ピクチャレスク、3風景画とピクチャレスクの誕生、3-1風景画と「風景」概念、風景画の不在と登場、「風景」の誕生、クロードとローザの描く風景3-2ピクチャレスクの成立、ピクチャレスクの定義、不規則さによる多様性、構図による統一性、1の答え合わせ、4ピクチャレスクの広がり(観光と庭園)、4-1ピクチャレスク・ツワー、国内旅行の流行と観光産業の成立、風景のスケッチ、クロード・グラス、ピクチャレスクな人、4-2風景式庭園への適用、庭園革命、風景式庭園とピクチャレスク、5美や芸術は自然とどのように関わることができるのか、風景の形式化と理想化、自然鑑賞の普及、自然を美しいものとして眺めること、芸術をとおして自然と向き合う、、

まとめ

芸術、芸術家、美、崇高、ピクチャレスクで構成、美学の成立過程の視点からの入門書、本書はNPO法人国立人文研究所市民講座「KUNILABO人文学講座」の「近代美学入門」を書籍化したものである、

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