本書はソ連から独立したウクライナがKGBが同国に残したアーカイブを公開した資料に基づき書かれたものである、著者は保坂三四郎、上智大学外国語学部卒業、タジキスタン大使館勤務を経て国際防衛安全保障センター(エストニア)研究員、タルトゥ大学ヨハン・シュッテ政治研究所在籍、専門はロシアのインテリジェンス活動・戦略ナラティブ、
歴史・組織・要員ーKGBとは一体何か
1チェキストの系譜―どこにでもスパイを見る、ボリシェヴィキの国家テロ組織、「生まれ変わった」チェ―カー、スターリンの内務人民委員部、非スターリン化、予防「プラフィラㇰティカ」、ジェルジンスキー信仰、2巨大な機構ーKGBの主要部局と役割、ルビャンカを頂点とする垂直構造、現役予備将校ー国家・社会への浸透、第一総局ー対外諜報、第二総局ー防諜、第三総局ー軍を服従させる、第五局ー思想警察、第六局ー経済防諜、3エージェントーチェキストの「見えない相棒」、KGBエージェント、外国人のリクルート、スターリン下の「通報者」、半公然の協力者「信頼できる者」
体制転換ーなぜKGBは生き残ったか
1KGBのペレストロイカーソ連崩壊前夜のKGBの疑似「改革」、移行経済への浸透、KGBのオフシヨアー企業ー消えた党資産、ソ連の「民主化」ーチェキストの出馬、グラースノスチと秘密警察、不都合な過去、2KGB改革の失敗、KGB[規制」法、議会への浸透、KGBアーカイブー奪われた「知る権利」、幻となったチェキストの公職追放、3プーチンのシステマーFSB=マフィア=行政の三位一体、アンドロポフ神話、マフィアの元締めはルビャンカ、政敵を取り締まる経済保安局・自己保安局、環境保護・人権保護NGO、現役予備将校から出向職員・クラートルへ、監視網ー大学・ジャーナリズム・ウエブまで、対外諜報と国内防諜の曖昧な堺線、法執行機関・司法・地方に対する統制、
戦術・手法ー変わらない伝統
1アクティブメジャーズーKGBの「心と魂」、パブリック・ディプロマシ―との違い、現実に介入する、コンプロマットの活用、ソ連崩壊後の「支援措置」、2偽情報ー正確な情報ほど効果がある、嘘とは限らない、陰謀論、ポスト真実と「オルタナティブ」、半真実の方法、3インフルエンス・エージェントースパイと異なる特殊肯定感化、報酬はエージェントの自己実現、ソ連と外国人研究者、ポチョムキン村、ヴァルダイ討論クラブ、4フロント組織、偽の反戦NGO・極右組織、官製NGO「GONGO]、
メディアと政治技術ー絶え間ない改善
1政治技術、幻想を作る仕事、ハイブリッド体制の政治、テレビの乗っ取り、専門家会合とテーマ集」、浸透されるぶ「リベラル派」、2サイバースペースでの展開、ジョージア侵攻と検索サイト、博覧会からソーシャルメディアへ、米国大統領選挙とトロール工場、進化するトリック・拡大するターゲット、3ナラティブの操作、戦略ナラティブとは、ロシアが得意とする誤謬「ワタバウティズム」、「ロシア嫌悪症」、西側の「挑発」と「情報戦争」、
共産主義に代わるチェキストの世界観
1ゲオポリティカー地政思想と「影響圏」、「包囲された要塞」、ドゥ-ギンとネオ・ユーラシア主義、地政思想とチェキスト、神の名を借りたチェ―カー、2大祖国戦争の神話ー全ての敵は「ファシスト」、独ソ密約による東欧分割、ウクライナの遅れて始まった非共産化、「5月9日」の文化、歴史プロパガンダの破壊力、消された「レンドリース」、3「ロシア世界」ープーシキン・ドストエフスキーを隠れ蓑にして、「ロシア世界とは」、影響圏維持のための道具「同胞」、連邦交流庁とアクティブメジャーズ、外国の若者を取り込む、4ロシア正教会ーKGBエージェントが牛耳る教会、三つのテーゼ、教会とKGB,コードネーム「ミハイロフ」、正教会チェキスト、5子どもからスポーツまでー全てを動員する、コムソモールからナーシへ、公共プロジェクトとユナルミヤ、スポーツの父、ソチー諜報の要塞、
ロシア・ウクライナ戦争―チェキストの戦争
1ウクライナ侵攻ー作り出された「内戦」、アクティブメジャーズ「包囲措置」、軍事侵攻を「内戦」にすり替える、2「ウクライナ危機」を見る眼ー学術界とロシア、ロシア中心主義と反米国覇権主義、シンクタンクの海外浸透、カーネギー・モスクワセンターの末路、
全面侵攻後のロシア
ソ連に回帰したロシア、クーデターは起こるのか、プーチン後の可能性、100年以上続く保安機関、ロシアの崩壊・分裂、高まる中国依存、相互依存アプローチの失敗、「手口」を知る、
まとめ
歴史・組織・要因、体制転換、戦術・手法、メディアと政治技術、共産主義に代わるチェキスト、ロシア・ウクライナ戦争、全面侵攻後のロシアで構成、ロシアではKGBアーカイブが封鎖されているが、ウクライナは全面公開されている、ロシアはウクライナのことは知らない、