首都の地政学

本書は首都の地政学的な誘導を個別に探ってみたものである、著者は内藤博文、大学卒業後新書系出版社勤務、歴史・地理・世界と日本・文化・娯楽を得意とするライター、

北京に見る軍事主体の地政学

長安・洛陽と北京・どちらを都とするかで中国は別の国になる、長安と洛陽を不動の都とした中華思想とは、中国王朝の西方への進出と北方への防衛を支えてきた長安、中華思想と無縁な民族の勃興で神通力を失った長安と洛陽、異民族によって帝国の都へと成長した北京、明帝国はなぜ・みずから選んだ都南京を放棄したのか、軍事力を誇示することで中国大陸の都であり続ける北京、共産党政権が北京を首都に置かざるを得なかった事情とは、中国は北京を都とする限りなぜ攻撃的でなければならないのか、

ベルリンに見る東方拡大の地政学

ドイツはなぜ東のはずれにあたるベルリンを首都にした、かっては大帝国の中心だったベルリン、統一ドイツ躍進の時代・ベルリンが急成長を遂げた理由、第一次世界大戦の敗北で宙に浮いたベルリンの地位、ヒトラー独裁を容認したドイツ人の東方拡大願望とは、ドイツをソ連侵攻へと駆り立てたベルリンの地政学的誘導とは、東西分割後もベルリンを領有し続けた西ドイツの思惑とは、EUの東方拡大がベルリンの存在感を高める理由、ベルリンによる地政学的誘導の新たなる終着点とは、

モスクワに見る西方抑止の地政学

19世紀・二つの首都を持つ「キメラ」だったロシア、自然国境をもたないモスクワの地政学的誘導とは、中央アジア勢力への服従からはじまったモスクワの歴史、ピュートル1世が新都の建設に注力した理由とは、新都サンクトペテルブルグが秘める地政学的誘導とは、ナポレオン戦争という試練で栄光をつかんだ旧都モスクワ、サンクトペテルブルクが導いたロシアの近代化、ロシアの親西欧化はなぜ帝国を破滅させたのか、ボリシェヴィキ政権がペトログラードからモスクワに都を移したわけ、モスクワへの首都移転がソ連の崩壊の遠因となっていた、ロシアが「従深」を求めるほど周辺国の敵意は深まる、

ロンドンに見る大陸関与の地政学

イギリスがブレグジット(EU離脱)後もヨーロッパ大陸に束縛される理由、フランスの勢力が産み落とした首都ロンドン、歴代のイングランド王はなぜフランスの領地を欲したのか、大陸に近いため多発したロンドンの政権転覆事件、ロンドン政権の大陸への姿勢はどう変化していった、強大な帝国の誕生を防いだロンドンの地政学的決意とは、大陸を牽制し続けるイギリスの決意が揺らいだ20世紀、イギリスのEU加盟と離脱の背後にあるものとは、スコットランドはなぜロンドンにとっての火薬庫なのか、

デリーに見る北斉監視の地政学

なぜ宿敵との国境に近いデリーを首都としている、インドに首都が存在しなかった地政学的事情とは、デリーの首都化はムスリム勢力の北インド侵攻からからはじまった、インド最大の版図を誇ったムガル帝国の都もデリーに、ムガル帝国の有名無実ともに輝きを失ったデリー、ニューデリーが場当たり的にインド帝国の首都となったわけ、デリーを対パキスタンの要地とした政府の思惑とは、インドが宿敵パキスタンを楯にしたい地政学的な事情とは、

イスタンブールに見る帝国再興の地政学

現代トルコが帝国の都イスタンブールを首都としなかった理由、首都アンカラを中心に据えた大トルコ構想とは、ナゴルノカラバフ戦争でトルコがアゼルバイジャンを支援した事情、帝国ふたたびの夢をイスタンブールに託したいトルコ民族、イスタンブールはなぜ帝国の都でありつづけてきたのか、コンスタンティノープルの征服者が取り憑かれる衝動とは、第一次世界大戦下ロシアがイスタンブールを欲した理由とは、イスタンブールに都を戻すとき・トルコの帝国化がはじまる、

ワシントンに見る覇権主義の地政学

首都ワシントンがアメリカを帝国主義に向かわせている、安全なはずの超大国が抱く地政学的な危機意識とは、太平洋での日米対決の引き金となった海の向こうへの疑念とは、ワシントンの地政学的誘導を強化させた真珠湾奇襲、アメリカがミサイルシステム構築に熱をあげた背景とは、

ソウルに見る力の放棄の地政学

ソウルはなぜ朝鮮半島の不動の都となったのか、ソウルを別格の都市に持ち上げた「小中華思想」とは、ソウルが誘導していた朝鮮半島の力の放棄とは(北への膨張)、時の権力者に見捨てられる首都ソウルと住民たち、第二次世界大戦後ソウルが発し始めた新たな地政学的誘導とは、

東京に見る開拓精神の地政学

複数の都が併存する世界でも珍しい国・日本、日本の都はなぜ畿内に誕生し転々としたのか、住民に愛想をつかされた近江京の天智政権、京都が日本列島の東西分断をもたらしていた、大阪・神戸を都とした権力者たちの狙いとは、鎌倉に始まる東国の都の地政学的誘導とは、足利尊氏はなぜ鎌倉ではなく京都を都に選んだ、室町時代早くから統治不能になっていた関東、家康の江戸開府によって生じた日本での三都鼎立、首都江戸が有したフロンティアへの地政学的誘導とは、東京の持つフロンティアへの誘導を封じるワシントン(米軍基地の存在)、

まとめ

北京・ベルリン・モスクワ・ロンドン・デリー・イスタンブール・ワシントン・ソウル・東京の各地政学で構成、本書は首都を選ぶ行動原理・野心をあぶりだしたものである

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