焼き芋とドーナツ

本書は「女工哀史」を再考、食と食の「あいだ」に光を当て、日米の比較を考察したものである、著者は湯澤規子、筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得満期退学、現在は法政大学人間環境学部教授、「生きる」をテーマに地理・歴史・経済の視点から日常を問い直すフィールドワーフを重ねる、

Ⅰ日本の女性たち

糸と饅頭

働く女性への二つのまなざし、産業革命と帝都拡大のフロンティアで「女工哀史」は生まれた、「女工哀史」に「生身」の女性は描かれていない、ある女工の「新しい人生」の始まり、茶飯が取り持つ女工たちの生活世界と人間関係、違和感の吐露は「愚痴」ではなく「抗いのかたち」、「何で私が愚妻なものか・あっははは」、「わたし」の歴史といえるまで、

焼き芋と胃袋

女性労働者の誕生と日常生活世界ー自分のお金で自分のもんを買う、女工の胃袋物語ー日常茶飯の喜怒哀楽、工場の共同炊事と小遣いによる外食、働く身体は誰のもの、工場法成立後・栄養学が誕生する、「工場食」と「共同炊事」は「産業福利」でもあった、武藤山治の「温情主義」ー企業という大きな家族、大原孫三郎の「人格向上主義」ー女工へのまなざし、内助と対等、自由に外出する権利を獲得する、集会と焼き芋は喜びとささやかな抵抗、利職

米と潮騒

騒動ではなかった魚津の潮騒、つくられた「民衆暴動」としての米騒動というマスター・ナラティヴ、大杉栄が体験した大阪の騒動、米と都市という劇場、共同の「困窮」から「個別の貧困」への転換横山源之助が記した故郷魚津の米騒動、井戸端と勝手口から始まる「定式化」した運動だった、女の自治圏と男の自治圏、100年を経て・再び潮騒を聞く、

月とクリームパン

関東大震災と「新しき女」たち、良妻賢母が新たな女性教育にとって代わった、「労働者は機械に非ず・器具にあらず・また家畜でもない」、アメリカを起点にした女性労働者へのまなざし、受け容れられなかった「人格の向上」、宮城県における思想的風土ー近代におけるキリスト教の役割、北のアンビシャス・ガール、黒光の「大志」を受けとめた明治女学校、パン屋の女将となって仰ぐ月、中村屋の逸品は「出会いの物語」から生まれた、明治女子教育の挫折、津田梅子とアリス・ベーコンが見た日本近代、

Ⅱアメリカの女性たち

野ぶどうとペン

ウッズホールで津田梅子が見たもの、アメリカ大陸に降り立った最初の女性たち、17世紀・新しい女性は追放され・魔女にされた、17~18世紀・女性たちは様々な顔と役割をもっていた、炉辺の番と学問への扉、アメリカにおける女性作家、野ぶどうとペンがバーネットを作家に導いた、もう一つの「若草物語」、哲学は台所から生まれる、労働文学としての「仕事」、ストーリー・オブ・マイライフー「わたしの」若草物語、ペンを執る「新しき女」の群像、

パンと綿布

「織機の間の知性」、アメリカ織物業史には三つの画期がある、ローウエルの女性労働者の「生活」と「労働」、女工たちは腹痛に悩まされていた、女工たちは経済的に自立していた、新しい経験と過酷な労働・生活環境、女工たちの社交と連帯、自らを「耕し」・「わたし」という主語で語る、史料1、史料2,機械と紡錘車・窓の宝石ーハリエット・H・ロビンソンのライフヒストリー、「ローウエル・オファリング」の源流ールーシー・ㇻ―コムのライフヒストリー、

キルトと蜂蜜

アメリカン・パッチワークキルトは生きる尊敬を表現するメディア、パッチワークキルトの女性史、女性たちの西部開拓と生活記録ー「パイオニア・ウーマン」、針と糸によるメッセージ、開拓地では男女はほとんど平等になっていた、西部開拓と女性教師ー学校で読まれていたオールコットの小説、開かれた大学教育の扉をくぐった津田梅子、知られざる日米女性交流史、

ドーナツと胃袋

ローウェルの近郊ダンスタに生まれた探求心旺盛な少女、重炭酸ソーダからみた化学の世界、「ゴディス・レディース・ブック」で初の女子大創設を知る、学ぶ喜び、マサチューセッツ工科大学の扉をたたく、人間と環境―ヒューマン・エコロジーとホーム・ケミストリーの誕生、家事と化学をつなげるー家政学への萌芽、「金ぴか時代」の都市問題を日常茶飯の視点で考える、台所から社会を変えるーニューイングランド・キッチンの誕生、パブリック・キッチンの必要性ー「パン屋もの」を食べて働く女性たち、ボストンで全米初の学校給食が始まる、女性と教育と産業ーWEIUの設立とその目的、レシピを共有して連帯するーWEIUのクックブック、20世紀初頭における移民女性の生活、女性たちによる「働く女性たちの胃袋調査」単身女性が都市で暮らしていくために、アメリカ女性労働運動とシスターフッドー「最低賃金」ではなく「生きるための賃金」を、

「わたしたち」を生きる

津田梅子がアメリカ合衆国で見たもの学んだもの、現代の起点として「新しい女性教育」の挫折、大原孫三郎の「人格向上主義」を再考する、日米シスターフッド交流秘史」と現代の「わたしたち」、「厚い記述」による日常茶飯の叙事史ー対岸の歴史学、女性たちの対岸、

まとめ

日本の女性たち、糸と饅頭、焼き芋と胃袋、米と潮騒、月とクリームパン、アメリカの女性たち、野ぶどうとペン、パンと綿布、キルトと蜂蜜、ドーナツと胃袋、わたしたちを生きるで構成、本書は生活世界と産業世界を目配りし、女性労働者の生活世界を日米から鮮明に考察したものである、対岸の火事ではない、著者は「わたしさがし」であったと記している、

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA