幻想の中世

中世はたえず幻想的なものへ立ち戻りつつ進化を遂げた、本書はこうした外部からの寄与を研究したもの、著者J・バルトルシャイティス、リトアニア出身、フランスの美術史家、

①ゴシックのグリロス

1頭部を色々に組み合わせて作る怪物、頭脚人、身体各部に増殖する頭や顔、2古代のグリロス、ギリシャ=ローマの玉石彫刻、躯幹に顔を持つ無頭身,多頭霊、ペルシャ・スキタイの頭房、サルディスの甲虫,面付き兜、動物の形をした頂飾りの起源、3中世における古代彫石、前ロマネスクの金銀細工において、十二世紀後半と十三世紀におけるカロリング朝趣味の覚醒、古代印章、金石伝説、グリロスの陰刻されたインタリヨ、マシュー・パリスの描いたカメオ、4中世における無頭神と他頭神、伝説の中で、地獄図と寓意図のなかで、アングロ=ノルマン系黙示録のなかの双頭ゴルゴン、ゴシックの兜、5中世末期におけるグリロス、解体現象、新しい生命、グリロスの画家ヒエロニムス・ボス、

②印章と古代の奇想

1印章の奇想、貝中獣、貝殻から這い出る古代動物と「貝のアフロディテ」、中世における獣を孕む貝、飛行機と魚形船、2古代貨幣、三脚巴文、「カピトリヌスの雌狼」、主題の継受における小銭の役割、描かれたメダル、ガリア貨幣、ケルトの「二本足の四足獣」、

③イスラームのオーナメントと装飾枠

1ゴシック的中世におけるイスラーム世界、アラビア科学、「サラセン風」の趣味ー蒐集品、贋造品、2抽象文、クーフィー文、多辺紐文、放射組紐文、花文字、3幻想的な植物文、ゴシックのルーミー、オリエントの半パルメット文と十三から十四世紀の写本の植物群、縁飾り、4嵌枠、オリエントの円形嵌枠、多辺形嵌枠と弁状正方形嵌枠、ファーティマ朝の梁、ルネサンスのアラベスク、
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④幻想的アラベスク

1獣文の回帰、2アラビア的オーナメントの変身、生きている組紐文、動物のかたちをしたルーミー、四肢を欠いた獣、3人頭・軀幹唐草、オリエントにおいて、無脚人、人の形をしたナスヒー体、4「ワクワク樹」、人頭樹、イスラームの伝承・図像における動物のかたちをした植物と言葉をしゃべる植物、西欧的モルフォ―ズー頭をつけた「生命の樹」とライン河一帯でのその作例群、中世植物学におけるオリエント的寓話、「日輪樹」と「月輪樹」、紋章としての「悪の樹」、「錬金術の樹」、「エッサイの樹」と「魂の戦いの樹」、5その他の主題、月の顔、尻尾との闘い、もつれ合った構成ー身体各部の入れ替えが可能な野兎・魚・馬・人・猿、6ムッザーヒーブとゴシップの写本彩飾師、

⑤蝙蝠の翼手と中国の鬼神

1中世における蝙蝠の翼手と龍の頭冠、ロマネスク美術における翼のない悪魔と天使の翼を持った悪魔、十三世紀における翼手と棘冠の出現-人間・龍・怪物・騎士、レオナルドダヴィンチの飛翔する人間、2蝙蝠の翼手と東アジアの鬼神、海龍、有翼人、李龍眠の地獄絵、雷神、西欧的不変性―垂乳根霊、樹木霊、象鼻霊、大耳一角霊、狗頭霊、唐代の甲冑、3東アジアと西欧、モンゴル人の侵攻と彼らの魅力、外交官と探検家、中国におけるフランシスコ会の世紀、タルタリカ、交易ー織物と磁器、服飾ー鶏冠帽、西欧のイメージ体系における中国人とモンゴル人、4西欧における東アジアの絵画と地獄についての伝承、ハイトン、イブン・バㇳゥ―タ、マルコポーロの証言、黄金の龍を造ったギョーム・ブーシェ、「モンゴルの反キリスト」神話、アルメニアにおいてーキラコスの「年代記」、西欧においてーリカルド・ダ・モンテ・クローチェ、ロジャー・ベイコン、直接交流と符号、

⑥東アジアの驚異

1東アジアの神々、それらの台座と光背、多臂神と蛇神ナーガ、花冠台座をともなう「エッサイの樹」、水晶の光背、透明な宇宙、容器の中の人間、2生動する自然、動物のかたちをした山岳と岩山、中国の地占術ー風水・地に棲息する青龍と白狐、中国の画論における人間と動物のかたちをした風景、主山と客山、ペルシャの動物のかたちをした岩山、ゴッシックの植物図譜における風水体系、西欧における生ける自然、壁の染みについてのレオナルドダヴィンチと宋迪の解釈、3生命ある器物、ボスとブリューゲルの作品における器物の反乱、東アジアにおける人間化した器物と道具類、

⑦大いなる仏教的主題

1仏教と西欧の誘惑図、東洋と仏の誘惑図、オリエントの聖アントニウス伝説、聖アントニウスの誘惑ー万物襲来による絶えざる試練という主題の変容、2「死の舞踏」と朽ち果てた死骸、中世における死者との出会い、横たわる死者,立つ死者、踊る死者、古代の死霊、菩薩の第三・四の出会い、西欧における死の諸相、墓碑彫刻、立つ死者ーキジルおよびイタリアのフレスコ画における骸骨と修道士の問答、魔物化した骸骨、ヴェターラ、チテェパティ、ラマ教の「死の舞踏」、ラマ教とフランシスコ会の中心地・北京、ヴォルゲムートのチテェパティ、3マンダラ、仏教的マンダラ、ゴシック的マンダラ、輪廻の輪とその西欧的変容、4ゴシックの幟、

⑧東洋の蓮華アーチ

1東洋の背向曲線、蓮華アーチー彫刻化されたアーチ、インドと中国の石窟寺院、背向曲線の変容版、イスラーム風蓮華アーチとアルメニア風蓮華アーチ、2西欧における背向曲線、イギリスにおける蓮華アーチー花綱飾りの蓮華アーチ、三重蓮華アーチ、フランボアヤン建設における蓮華アーチー半円形の蓮華アーチ、籠の把手型の蓮華アーチ、平板な蓮華アーチ、土壌と時期の一致、

まとめ

ゴシック的中世は生命秩序、リアリズム、西欧的なものに向かって進化するというにとどまらない、超現実的な側面、人為的な技巧、異国的な趣味も併せ持った、本書は方向を与えた異国の寄与を論じた、

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