本書は1994年の福祉党の統一地方選での大躍進、その後の経済発展をとげ、世界の注目を増すようになったトルコの知られざるエルドアンの超長期政権を考察したものである、著者は間寧、東京外国語大学英米語学科卒業、中東工科大学行政学修士課程修了、ビルケント大学政治学博士課程修了、現在東京外国語大学大学院客員教授、専門は比較政治学・トルコ政治経済、
なぜ一党優位を維持できたのか
一党優位性とトルコ、一党制下での世俗改革と国家主導経済、複数政党制への移行から多数派の専制へ、多元主義的憲法と政治的不安定、反動的憲法と再民主化、コラム1エルドアンが首相になるまで、
公正発展党とはー政党としての特質
1イデオロギー、トルコにおける親イスラム政党、保守民主主義標榜、親イスラム政権と公共事業経済、2組織化、都市市政の基盤、階層的な党組織、エルドアンによる党支配へ、3支配層、「周辺」の支持、支持構造変化、MHPとの競合、コラム2武闘派と穏健派・反体制派の戦略、コラム3エルドアンのちゃぶ台ひっくり返し・クルド武装組織との和平過程、
後光力・経済業績と有権者
1一等優位制と経済業績投票、世界の一党優位制と経済業績投票、AKP政権の経済業績、AKP政権下の投票行動、2研究設計とデータ、有権者の三つの選択・与党・野党・未定、経済業績評価・長期と短期、3後光の発生と消滅、定着期と衰退期の違い、有権者の危機回避と棄権回避、
庇護力・社会的保護の拡充
1開発途上国における社会的保護、促進要因と政策効果、トルコにおける社会的保護、2保健医療と年金、AKP政権下での改革、改革の効果、3社会扶助、AKP政権下での改革、改革の効果、4政権支持効果、社会的保護は政権をたすけるか、分析方法、結果、コラム5難民のジレンマ・トルコEU難民合意、
言説力・民主主義からポピュリズムへ
1エルドアンのポピュリズム、ポピュリズムとは、最小限定義、拡大定義、2エルドアンの言説転換、常用語句と言説例、争点支配による言説転換、言説政治の概観、3劣勢での多元主義フレーム、スカーフ論争と改革抵抗、大統領選挙への介入、スカーフ改憲違憲判決・AKP解党訴訟、4優勢での多数派主義フレーム、PKK対策としての民主化、国家エリート粛正擁護、手段としての民主主義、コラム6もういちどイスタンブル・やり直し選挙での与党再敗北、
危機を機会へ・2016年7月クーデタ未遂
1「トルコらしくない」クーデタの試み、経緯、首謀者、2学生支援から国家浸透へ、ギョレン派とは、政府との関係構築、階層構造と浸透方法、3AKP政権との蜜月から対立へ、AKP政権の庇護、陰謀訴訟、AKP政権との対立、4排除と便乗、ギョレン派排除、非常事態令、便乗、コラム7誤算の清算・トルコのシリア侵攻、
小党依存の強権化・集権的大統領制導入
1議院内閣制から集権的大統領制へ、なぜ大統領か、憲法改正のための国民投票、世論支持の欠如、2集権的大統領制の構造、大統領の任期長期化と与党掌握、大統領権限の拡大、権限抑制機能の欠如、3大統領・国会同時選挙、迫られた繰り上げ双選挙、政局屋との取引、選挙戦と選挙結果、4与党集票力の低下、議会での与党地盤沈下、野党の連合効果、統一地方選挙での野党躍進、コラム8外向き・内向き・風の向き、AKP政権外交
崩壊の予兆・統治能力低下と経済危機
1IMF構造改革成果の消滅、IMF改革を好まなかったエルドアン、市場原理から政治原理へ、経済政策人材の排除、2大統領への集権と経済危機、恣意的財政・金融政策、繰り返す通貨危機、中央銀行総裁更迭では変わらない現実、3集権的大統領制の危弱性、権力独占と機能低下、エルドアンの判断力低下、4政権交代の可能性、迫る大統領・議会同時選挙、野党の戦略、エルドアンの巻き返し、鍵を握る親クルド政党、コラム9海峡の番人かNATOのジョーカーか・ウクライナ紛争、
引力政治から無力政治へ
引力政治から無力政治へ、・引力政治の力学、制度浸食、無力政治の力学、体制移行後の政策、コラム10トルコ大地震、与野党の復興選挙
まとめ
なぜ一党優位を維持できたか、公正発展党とは、後光力、庇護力、言説力、危機を機会に、小党依存の強権化、崩壊の予兆、引力政治から無力政治へで構成、なぜエルドアンの安定した超長期政権が実現したのかを考察、その結果野党勢力が結集、トルコの政治経済体制を変える可能性に期待がもてる、