本書は「シンデレラ・コンプレックス」を振り払った「ジェイン・エア」の成立・変転・展望について考察したものである、著者は廣野由美子、神戸大学大学院文化研究科博士課程単位取得退学、山口大学教育学部助教授を経て現在は京都大学大学院人間・環境学研究科教授、専攻は英文学、イギリス小説
脱シンデレラ物語の原型
-シャーロット・ブロンテ「ジェイン・エア」ー
1女性像の変転ージェイン・エア」以前の文学を見る、民間伝承「シンデレラ」の起源と伝播、イギリス小説に根を下ろしたシンデレラ・ストーリー、ジェイン・オースティンのヒロインたち、2不遇な幼少時代を送るヒロイン登場、新しいタイプの女主人公ジェイン・エア、対立と復讐・そして脱出、3学校生活とキャリア、勉学に励むことと・人間関係の形成、学校教師から家庭教師へのキャリアアップ、4男性パートナーとの対等な関係、お伽噺のパロディー真の自立を目指して、対等なパートナーを求めて、作家への道ージェインの物語とシャーロットの人生、
アメリカに渡った「ジェイン・エア」
ー「若草物語」「リンバロストの乙女」「あしながおじさん」
1「ジェイン・エア」の物語とアメリカの女性作家たち、ジェイン・エアの娘たちはどこへ行ったのか、ルイ―ザ・メイ・オルコット、ジーン・ストラットン・ポーター、ジーン・ウエブスター、2女らしさへの問いールイ―ザ・メイ・オルコット「若草物語」、新しい女主人公ジョー、情念の激しさ、作家になる、3逆境を乗り越える―ジーン・ストラットン・ポーター「リンバロストの乙女」、母の仕打ち、自己達成と人間関係の形成、恋敵との対決、4自立の道ージーン・ウェブスター「あしながおじさん」、孤児であること、居場所の獲得、女性が仕事に生きがいを見出す物語、シンデレラ物語から脱シンデレラ物語へ、
カナダで暮らした不滅の少女小説
ールーシー・モード・モンゴメリー「赤毛のアン」
1自分らしさと強さの肯定ー「ジェイン・エア」からの飛躍、モンゴメリの人生とその時代、モンゴメリにとってのシャーロット・ブロンテ、「家無し」で「不美人」であることートラウマとコンプレックス、2自力で居場所を獲得する物語、孤児に対する偏見を乗り越えて、周囲の人々が変化していく物語、マリラの心の推移の物語、「我が家」とは何か、3能力でキャリアを開く、文学の力、言葉の力が生み出すもの、学力を磨く、進学への道、4敵対から友愛へ、不幸な出会い、ライバル意識の変容、友情・そして恋愛へー
イギリスでの変転ととその後の「ジェイン・エア」
ールーマー・ゴッデン「木曜日の子どもたち」
1「シンデレラ」のゆくえー「ジェイン・エア」からの変容、イギリスのおける「ジェイン・エアの末裔たち」ージョージ・エリオット、海を渡ったフランシス・バーネット、ルーマー・ゴッデンの人生、ゴッデンがシャーロット・ブロンテから受け継いだもの、「木曜日の子ども」とは誰のことか、2母としての「ジェイン・エア」、果たせなかった夢を娘に託す母、行き過ぎた願望の果て、母としての苦渋、3シンデレラ少年の物語、親から軽視された子ども、シンデレラ少年物語の新しい要素、シンデレラ少年からの脱出、デューンにとっての「我が家」とは何か、4「意地悪な姉」の再生の物語、いかに歪んでいくか、良心の目覚め、失恋と再生、職業獲得への道を歩む子どもたち、
変わりゆく物語
ージェイン・エア・シンドローム」のゆくえ
1変貌する「シンデレラ物語」ーディズニー映画と現代、プリンセス・ストーリーの改造、変容する「シンデレラ」、「眠れる森の美女」から「マレフィセント」、「アナと雪の女王」、2変わる読者の意識と時代ー新しい物語への展望、ジェイン・エア・シンドロームの光と影、子どものための文学の再評価と展望、
まとめ
脱シンデレラ物語の原型、アメリカに渡ったジェイン・エアの娘たち、カナダで誕生した不滅の少女小説、イギリスでの変転とその後のジェイン・エア、変わりゆく物語で構成、誰でもジェイン・エアになれる、「ジェイン・エアシンローム」の現象と作家たちを再評価したものである、