本書は古代中国の説話とその虚構性を指摘し,実態の歴史を述べたものである、著者は落合淳思、立命館大学大学院文学研究科史学専攻修了、現在は立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所客員研究員、
古代中国の説話
古代中国における説話の創作、戦国時代の社会変化と説話の内容、人間社会としての整合性、歴史学における説話の利用方法、なぜ人間は作り話を信用するのか、科学的な歴史分析について、
Ⅰ上古の時代
三皇五帝-禅譲・放伐
1「三皇五帝」の説話と説話とのその虚構性、三皇五帝の説話、時代的な矛盾、2新石器時代の実態、新石器時代の各地の文化、宗教的権威の獲得、原始社会は母系社会か、コラム・なぜ「禅譲・放伐」の説話がつくられたか、各地の神話、禅譲・放伐とその利用
夏の禹王ー九州の治水
1「夏王朝」の説話とその虚構性、歴史資料における禹の記述、実際の二里頭文化、二里頭文化と夏王朝の相違、後代の系譜創作、2二里頭文化の実態、コラム・夏王朝の説話とその虚構性、2二里頭文化の実態、王朝の成立、世襲王権と儀礼、差別の顕在化、東アジアの原点、コラム・「夏王朝」の創作、中国各地の遺跡、「九州」の由来、
殷の紂王ー酒池肉林
1「酒池肉林説話」とその虚構性、紂王の酒池肉林、紂王説話の時代矛盾、帝辛の政治、2殷王朝の実態、殷王朝前中期の歴史、武丁の中興、王朝支配の機構化、文武丁の改革から殷王朝の滅亡へ、コラム「酒池肉林説話」の形成、勝者による宣伝、勧善懲悪の教訓説話、
周の幽王ー笑わない褒姒
1「褒姒説話」とその虚構性、幽王と褒姒の説話、説話の矛盾点、男尊女卑の古代文明、2西周王朝の実態、西周代初期の拡大と賜与、西周代中期の停滞と冊命金文、西周代後期の貴族勢力、共和時代から宣王時代、西周王朝の内乱と滅亡、コラム・「幽王褒姒説話」の成立過程、春秋時代の幽王批判、戦国時代の教訓説話、
Ⅱ春秋時代
斉の管仲ー衣食足りて礼節を知る
1「管仲説話」とその虚構性、[管鮑の交わり」、管仲による桓公への献策、春秋時代の身分制、春秋時代の法と戦争、2斉覇の実態、春秋時代の歴史資料、春秋初期の紛争、斉の強大化、覇者の正統性、斉覇の拡大、覇者の実態、コラム、なぜ「管仲説話」がつくられたのか、覇者体制の忘却、稷下の学士、
楚の荘王ーの軽重を問う
1荘王の説話とその虚構性、「鼎の軽重を問う」、時代的問題・文化的問題、「五覇」の諸説、2晋楚対立の実態、宋の襄公の活躍、宋襄の覇権の仁、晋の内紛、文公の即位、文公の覇権、荘王の北進、コラム、なぜ楚の荘王が五覇とされたのか、覇者の誤解、「蛮夷」の変化、
夫差と句践ー臥薪嘗胆
1呉越の説話とその虚構性、「臥薪嘗胆」の説話、呉王臣下の説話、説話の成立年代、2春秋時代後期の情勢、晋楚の和平、世族の権益、晋覇の崩壊、覇権の一般構造、呉楚戦争、呉王夫差の覇道、呉越の歩兵戦、コラム・呉越の説話制作の背景、呉越地域の社会、「孫氏」の成立過程、
魯の孔子ー由由らしむべし・知らしむべか増大らず
1「論語」とその誤解、由らしむべし・知らしむべからず」、孔子の思想、2春秋時代末期の情勢と儒家思想、資料的問題、諸侯の再編と君主権の増大、孔子の経歴と魯国の貴族権力、教育者としての孔子、官僚人員の需要、儒家と法家の系統、コラム、「申らしむべし・知らしむべからず」の解釈変更、漢代の儒教、解釈の変化、
Ⅲ戦国時代・秦
魏の恵王ー五十歩百歩
1「孟子」の説話とその虚構性、「五十歩百歩」、「孟子」の矛盾、孟子の現代批判、2戦国時代前期の情勢、魏の文候・武候、周辺国の強大化、恵王の敗北、商君変封、秦の爵制、戦国時代の社会変化、コラム・孟子による説話創作の原因、思想家の目的、孟子の理想論、
蘇秦と張儀ー合従連合
1「合縦連衡」の説話とその虚構性、「合従連衡」の説話、時代的矛盾、「戦国縦横家書」の縦と合衡、2戦国時代中期の情勢、斉・秦の拡大、燕の動向、斉の敗北、楚・趙の敗北と秦の一強化、道家の小国寡民思想、平和とは何か、墨家の非攻思想、秦の戦争の特異性、コラム・なぜ「合縦連衡」の説話が作られたのか、平和な時代の軍記物、創作が現実に与える影響、
戦国四君と呂不韋ー奇貨居くべし
1呂不葦の説話とその虚構性、「奇貨居くべし」、秦王の年齢、説話の模倣、2戦国四君と呂不葦の実態、戦国時代の王権と側近の台頭、猛嘗君と「鶏鳴狗盗」、三君による秦への対抗、呂不韋の権力と失脚、始皇帝による中国統一、コラム・なぜ呂不葦は追放されたのか、呂不韋の思想、始皇帝の思想、
秦の始皇帝ー焚書坑儒
1始皇帝の説話とその虚構性、「焚書坑儒」、事実と虚構の混在、「傍若無人」、2始皇帝の政治と秦王朝の滅亡、始皇帝の集権化政策、統一規格の制定、戦争と思想統制、秦法と漢法、集権化の長所と短所、始皇帝の死と二世皇帝の即位、「王侯将相いずくんぞ種あらんや」、秦の滅亡、集権化の速度、コラム・始皇帝はなぜ不老不死と関連づけられたのか、神薬の説話、支配機構は永続するか、
まとめ
古代中国の説話、上古の時代、春秋時代、戦国時代で構成、説話の虚構性を指摘し実態の歴史を述べた、古代中国には説話として伝えられたが実際は事実でないことが非常に多い、本書が目指したのは人文科学と社会科学の融合にある、