近世感染症の生活史

本書は医学書・幕府資料・日記・浮世絵などから人々の暮らしに感染症はどのような影響を与えたのか、生活のなかに感染症が占める位置づけを検討したものである、著者は鈴木則子、総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程取得修了、現在は奈良女子大学生活環境学部教授

「須佐之男命厄神退治之図」葛飾北斎画の世界

1「須佐之男命厄神退治之図」概要、①牛御前社の開帳と絵馬の奉納、②残された参考資料、2描かれた病、疱瘡(天然痘)、黴毒、インフルエンザ、巨大耳下腺腫瘍、フィラリアによる陰嚢水腫、疥癬、障害者、牛鬼、金太郎、警護の男、

Ⅰ慢性感染症

黴毒(梅毒)ー性感染症をめぐるディスクール

1「大風に類する」病、①ルイス・フロイスが見た日本、②患者名を伏せる、2黴毒のひろがりと警戒、①蔓延への認識、②諸病の影に潜む黴毒、3黴毒への羞恥、①病を隠す②自己治療する人々、③「湿家」という汚名、4病原としての下層社会と遊郭、①「卑賎の者」の病、②感染源としての遊女、

労瘵(結核)ー「恋の病」考

1明清医学の導入、①「気虚」と「伝染」、②道徳的戒め、2医学書の中のジェンダー、①若者の病、②女性の性欲、③「労倦」を顧みない男たち、3心を病む人々、①「気鬱」の強調、②「労鬱の家」③留滞と順気、④ストレス社会に生きる、4文芸史料の中の 労瘵、①「心をいたましる病」②浮世草子と女性の性欲、③女訓書にみる早婚の勧め、④エリートの証、

「癩」-「家筋」とされた

1中世から近世への転換、①中世の「癩」病観、②宣教師の時代、③近世初期の医学、2病者の特定化ー17世紀後半、①日常のなかの「癩」ー悪疾の血筋、②医学書の変化ー血脈の病、③病者を特定化する社会、3「悪血」の排出ー18世紀、①悪血の血脈、②瀉血治療の広がり、

Ⅱ急性感染症

流行り風邪(インフルエンザ)-江戸の町の疫病対策

1医学書からみた流行り風邪、①名称と病理②流行頻度と時期、③感染伝播のルート、2流行り風邪の通称と背景、①通称の登場、稲葉風、②流行りものあれこれ、お駒風、お世話風、谷風、御猪狩風
、お七風、ネンコロ風、ダンホ風③政道へのまなざし、津軽風、上方の琉球風、アメリカ風、尾張風・世直し風、3疫病対策の転換①寛政の改革と町会所の設立、②御救銭の支給、享和二年、文政四年、③御救米への変更、天保三年、嘉永四年、

麻疹-情報氾濫が生む社会不安

1麻疹養生法の広がりー享和三年、①経済的混乱と窮民対策②諸商売の明暗、③麻疹禁忌をめぐる論争、2麻疹がもたらす特需-文政六年、①幕府医官の印施②麻疹養成書の普及③「はしか銭」に群がる人々、3文久二年麻疹騒動、①天保七年の小流行②膨大な死者数情報、③麻疹絵登場、

疱瘡(天然痘)-共生から予防

1大宮町枡屋の場合、①長男松太郎の疱瘡、感染前の祈願、松太郎の発症、疱瘡心を祭る、湯かけ、痘後の不調、疱疹神送り、②弟妹達の「入り疱瘡」、牛痘接種の導入と代官所の種痘告諭、長女お花の種痘、次女お徳の種痘、三男熊吉と三女およしの種痘、2蒲原宿渡邊家の場合、①孫泰次郎とおいよの疱瘡・泰次郎の治療、おいよの治療、「疱瘡医師」を呼ぶ、「疱瘡医師」の治療、②集団接種の実行、おきみの種痘、もう一つの接種、

コレラー新興輸入感染症の脅威

1文政五年ー医療情報の伝達と記録、①「長崎屋宴会図」、②蘭方医ネットワーク、③江戸商人たちの反応、2安政五年ー戯作の中のコレラ経験、①コレラ医療の限界、②戯作「しに行・三日轉愛哀死々」③翻刻と考察、表紙ー死の舞踏、見返りー護符に反濫、玉川上水の毒と水屋の不況、海の毒と魚屋の不況、狐憑きの流行、焼の混雑、寺の繁盛、幕府の医療政策、死者数情報の肥大化、④疫病をふりかえる人々、

まとめ

描かれた病、慢性感染症(梅毒・結核・ライ)、急性感染症(インフルエンザ・麻疹・天然痘・コレラ)で構成、感染症の生活史描いたもの

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