これは「僕」に関する本である、本書は男性だけに普及しているこの不思議な言葉を探求したもの、著者は友田健太郎、歴史研究家・日本語教師・放送大学修士・東京大学法学部卒業、新聞社勤務を経てニューヨーク州立大学バッファロー校で経済学修士取得、
僕という問題
WBCを席捲した僕、野球スター今昔ーワイから僕へ、スポーツ界で一般化する僕、EXILEには僕を使うルールがある、女性にも広がる僕、僕が登場する記事が30倍に、「主体」を出す表現が増えている、僕が選ばれる割合が増加、僕は戦後世代の自称詞に、僕が増えた理由は、主な自称詞の由来や性質、男性が最も一般的に使うのは俺、自称詞とは、すり減っていく「敬意」、自称詞が徐々に「偉そうに」、僕が平等を促進、
僕の来歴ー古代から江戸後期
日本最古の僕、「古事記」の世界観を表現、「日本書紀」の僕、中国から来た僕、僕の二つの意味合い、中世の欠如、僕が使われ始めた元禄時代、初期の用例、唐代の「師道論」、元禄時代の僕は師道論へのオマージュ、身分制度の桎梏を離れた友情を表す僕、広がる僕使用、渡辺崋山の僕、
僕連帯を呼びかけるー吉田松陰
吉田松陰という人、長州の学問の伝統、松陰の人間関係、松陰の書簡の分類、僕の使用が少ない家族宛て書簡「友人宛」と「師匠宛」で僕を多く使用、弟子宛て書簡にも多い僕、親友でもあった兄・梅太郎、秀才の初めての挫折、秀才の初めての挫折、秀才の初めての非行、黒船が来て政治に目覚める、黒船に乗り込み・完全にコースを外れる、兄との激論、熊皮の敷物に込めた思い、松陰の出獄と松下村塾の始まり、政治活動の激化、感情の揺れと僕、同志に送る書簡の僕、領分関係者への僕、僕に込めた対等性
籠
、
僕たちの明治維新ー松陰の弟子
弟子たちの重要性、貴公子・高杉晋作、藩医の家の孤児・久坂玄瑞、武家社会の末端・入江杉蔵、松陰との出会い、松陰と杉蔵兄弟入獄、杉蔵に死を迫った松陰、杉蔵の反発と松陰の謝罪、家庭事情を打ち明ける晋作、玄瑞に友情を求める晋作、晋作と松陰、松陰の死、玄瑞と杉蔵の友情、杉蔵の志士活動の挫折、過激化する晋作と玄瑞、杉蔵の志士活動の本格派、杉蔵と玄瑞の最期、その後の晋作、身分社会の崩壊と僕、
僕の変貌ーエリートから自由な個人
下級武士が中心となった革命、明治時代の教育の普及、「安愚楽鍋
の僕、河竹黙阿弥の歌舞伎台本、黙阿弥作品の僕ー教育との関わり黙阿弥作品の僕ー金と権力、明治の「立身出世」と僕、江戸文人の僕、黙阿弥引退作に使われた僕、泥棒から権力者へ、黙阿弥自身の遺した僕、教育の普及、近代日本文学は「僕たちの文学」文豪・漱石の僕と君、明治時代の庶民と僕、大杉栄の僕、高村光太郎の僕、戦没学生の僕の分析、女性への呼びかけとしての僕、軍隊と僕、「戦没農民兵士の手紙」との比較、戦後の大学進学率の上昇と僕の普及、連続殺人鬼・大久保清のぼく、「男はつらいよ」諏訪家三代の僕、三田誠広の「僕って何」村上春樹の僕、社会へのコミットメントを深める村上春樹、僕の可能性とは、
女性と僕ー自由を求めて
これまでのまとめ、ストーリーの欠落としての女性、江戸時代・女性は僕を使わなかった、「男性化」への拒否感、「女性は女性らしく」、河竹黙阿弥が描いた女書生の僕、繁=お繁の自称詞使い分け、「当世書生気質」の中の女性の僕、「浮雲」の中の女性の僕、僕が映す学生文化への憧れ、田辺龍子「藪の鶯」、天才少女の小説「婦女の鑑」、翻訳小説に登場した僕、樋口一葉の登場、一葉の使った僕、男女の人生の違いを浮き彫りに、与謝野晶子の苦痛、「男装の麗人」水の江龍子僕、宝塚の僕、綿々と続く男装文化、奇人ー本荘幽蘭の僕、川島芳子の僕、男装の影の「素顔」、川島芳子は生きていた、戦中の「礼法要項」に定められた男女の別、戦後の僕の光景ー林芙美子の「浮雲」、戦後の教室での自称詞、「リボンの騎士」と「ベルサイユのばら」、その後の少女マンガの僕、性的マイノリティにとっての僕、僕らとわたしたち、詩人・最果タヒのぼく、人々の想いでを映し・日本語の「現在」を示す僕、
まとめ
僕という問題、来歴、連帯、明治維新、変貌、女性と僕で構成、本書は放送大学大学院修士論文「対等な男子同士の絆」「松下村塾生の絆と自称詞僕」がもとになっている、