船旅の文化史

洋行の時代、本書はそんな時代の人々の営みを、船旅を通して浮き彫りにしてみたものである、著者は富田昭次、ホテル・旅行・歴史作家、

タイタニック号、いまだ色褪せず

忘れられない悲劇、深海探査装置から送られた来た衝撃映像、海底に散乱するタイタニック号のはらわた、超大型客船で他社を圧倒するWSL、紳士的な振舞いを見せた大富豪、実は安全性を最も重視した船だった、ただ一人の日本人乗客が残した手記、石炭庫の火災という「新たな真実」、沈没を早めた隔壁の歪み、氷山よりも立ち往生を恐れた、

船の旅、苦しみから楽しみへ

船酔いに苦しんだ歴史上の知名人、船に弱いもの同士・同病相憐れむ、船に強い人を見て腹を立てた昆虫学者、酔い止めの薬で救われた野上弥生子、船上の食事に閉口した幕末の留学生、口に合わない食べ物でも威厳を崩さず、無聊に苦しめられた永井荷風、船旅をすると寿命が延びるという人も、船上から見える家々の小さな明かり、船旅の魅力が詰まった瀬戸内海航路、「人は船の楽しさを忘れている」、船で日本を離れる者の感傷「さらば祖国よ」

礼儀作法と社交の振舞い

乗船時の注意あれこれ、多額のチップを手渡してしまう日本人、見栄っ張りの人が周囲に迷惑を
かける、チップを先に渡す人・ごまかす人、日本船なのになぜ西洋の風習に倣うのか、服装を整えるのは自尊心のため、欧米人の振舞いに感心した日本人、人生を方向づけてくれた言葉を得て、チャップリンとコクトーの出会い、句会を開いたり・議論を戦わせたり、競売で寄付金を集める慈善活動も、船の上も「旅は道づれ・世は情け」、

「風俗画法」の日本郵船特集号を読む

汽船からの眺めは絵画のようだ、パリの花を詠み・ロンドンの月に嘯く、今日の旅客船は海に浮かぶ一大旅館、当時は外国人船長も少なくなかった、無事到着できれば一等も三等も同じ、家族や知人に「一片の雁信」を書き送るべし、一党食堂は華麗なる人々の祭典、豚の点眼に・タンサンとシガレット競争、舟游の快や・実に甲板運動場裡にあり、船旅伈

豪華客船の第一号・天洋丸出航

歓声に沸き立つ横浜港、客船氏史を飾る出来事が相次ぐ明治末期、内航は過去のもの・舞台は海外だ、巨船の注文にたじろいだ造船所、欧米の水準に最も近づいた客船、一等船客の外国人を自邸に招いて茶会を開く、「豪華の夢破れて海の女王空し」、客船は軽やかなジャズのリズムと共に、豪華客船は音楽も最先端を走っていた、

「優秀客船」とは何か

科学と文化と芸術の結晶
、全長が東京駅に四敵したマジェスティック号、一等大食堂の天井高は9メートル超、ブルーリボンの獲得競争、世界を圧倒するドイツの最優秀船、ドイツ船を手放しで褒める日本人、法学者・高柳賢三のブレーメン号印象記、乗船して感じた階級社会とと重大事件、日本でも相次いで優秀客船を建造、客船の規模は市場の規模に比例、

覇を争う二人の女王の物語

ーノルマンディ号とクイーンメリー号

海に浮かぶ美術館の誕生、高度な贅と美が結合した装飾、2等船客として乗り込んだ正宗白鳥、浮気心を起こさせないおもてなし、スピードで対決する二人の女王、巨船の外見‣中身をイラスト解説、運命の波に翻弄される二人の女王、幽霊保険に加入したクイーンメリー号

乗客の最大の楽しみは食事だった

生演奏の音楽が雰囲気を優雅に演出、ホテル王リッツの名声が客船にも及ぶ、鏡のような海で最後の晩餐、瀬戸内海航路でもお目当ては御馳走、一航海で同じメニューは厳禁、いちばん頭を痛めたのは食事時の席次、浅草海苔を勧められたアメリカ人、ホテルの料理人が客船で修行、乗客には懇切丁寧な配慮が、「給仕の執務心得」・その中身とは、喜劇王チャップリンを獲得した秘策、食通の外国人にも愛された「スキヤキパーティー」、メニューのデザインも楽しみの一つ、調理師学校の校長を感動させた料理長、

客船だからこそのおもてなし

太平洋横断132回の事務長・大いに語る、乗客を片時も飽きさせないために、余興の域を超越した船員たちの隠し芸、船好きだった大谷光瑞の愉快な逸話、新しい設備導入もサービスの一つ、「世界的創造」の冷房装置、タウトが感銘を受けた花毛布、サービスに対するチップ・その裏事情、日本人が船内装飾を手掛ける時代に、客船設計者・和辻春樹のサービス論、船客自身が配慮する「他人へのサービス」

ゲーテも夢想した二大運河を通行

岩倉使節団も通航したスエズ運河、スエズ運河で命拾いした本多静六、フランスへ引き返したかった天皇の料理番、スエズ運河通行中にカイロ観光、パナマ運河の工事に携わった日本人、生まれて初めて見る光景に騒然、

旅情の波間を進む連絡船

稚泊連絡船は霧の中・汽笛を鳴らして、国鉄連絡船の時代、デッキで食べた讃岐うどん、連絡船から海底鉄道へ、日本と韓国の歴史を運んだ連絡船、中国とつながっていた門司、上海へは下駄を履いて
はいて下駄をはいh

世界一周という壮大な旅のなかで

世界初の世界一周クルーズ船が日本に寄港、一種の流行になる世界一周クルーズ、100歳の乗客が気炎を吐いて話題を提供、国際親善に役立った小学校訪問、日本最初の団体世界一周・その様子は、3日間にわたって大運動会を開催、巨船を見て西洋への興味が勃然と湧く岡本一平、最も苦心したのはあるぜんちな丸、美しい流線形で好かれた客船、「外国の人はどんなに驚くのだろうと・僕は愉快に思います」、世界一周の航程は89日、

悲喜こもごもの移民船

自由の女神像を見て歓声を上げた人々、三等船客であっても心は錦、移民には無意味な船中生活、活躍する移民船の山城丸、笠戸丸の数奇な生涯、移民たちの負担を減らした政府援助、移民を輩出したその裏事情とは、移民たちに欠かせなかった移民宿、終生忘れられない仮装大会、

「南洋の島々」という新しい世界へ

ペリー提督が訪れた無人島、歴史の海に漂う小笠原諸島、小笠原旅行に勝るものなし。東京芝浦から4日目に父島へ、著名人が関心を寄せた南洋群島、日本の統治下に入って移住者も急増、石川達三は未知の土地への好奇心をを抱いて、南洋で見た美しさと哀しみ、

活字が伝える船旅の魅力

ー新しい書物と怪事件と白昼夢

海に出て新しい書物を開こう、巨大な密室で起きる事件の数々、豪華カジノ船という新しい試みのなかで、現実と虚構が錯綜する奇妙な出来事、日本文学者は海に無関心だという意外な批判、旅行雑誌として充実していた英文PR誌、船旅の時代を象徴する言葉の数々

まとめ

タイタニック号、船の旅、礼儀と社交、日本郵船、天洋丸、ノルマンディー号とクイーンメリー号、楽しみは食事、おもてなし、二大運河、連絡船、世界一周、移民船、南洋群島、船旅の魅力について追及したもの、

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