レビュー・中東・イスラーム世界の30の扉

中東・イスラーム世界を理解するために30のトピックスを5部に分け配置したものである、編者は西尾哲夫、人間文化研究機構・国立民族学博物館教授、専門は言語学・アラブ研究、著書は「ガラン版千一夜物語」他、東長靖、京都大学大学院アジアアフリカ地域研究科教授、専門はイスラーム学・中東地域研究、著書は「イスラームとスーフィズムー神秘主義・聖者信仰・道徳」他

概要

歴史の扉ー日本と中東の往還、1近代日本の中東発見、扉を開いた幕末・明治、志士たちによる中東発見・中東の大地に立つ中東の二大国オスマンとカージャール朝との解逅、航海演習と探検・諜報活動・冒険の中東、2近代日本と資源外交ーミイラ取りから石油まで、ミイラ取りがミイラになる、欧米に独占された中東の石油、明治以降の日本の石油政策、イランからの石油輸入、アラブの石油への関心、バハレーン石油の購入、サウジアラビアとの石油利権交渉、第二次世界大戦と石油、3戦前日本の中東表象ー福沢諭吉から大東亜共栄圏まで、中東という表象の揺らぎ,明治維新後の書物・教育による意識形成、直接的な交渉・接触の開始、日清・日露戦争の頃、第一次世界大戦ののち、戦間期における独自の表象・回教圏と欧阿近東、4迷子のバラの物語ー近現代日本の陶磁器輸出と中東、中部地方の陶磁器産業の発展、中東への輸出小史、中東市場向けの製品、イランの迷子のバラ、5グローバルスポーツとしての武道ーカラテからエジプト社会を考える、公共文化としてのスポーツ、武道のグローバル化とソフトパワー外交、エジプト人にとっての空手とは、ロスト・イン・トランスレーション、ソフトパワー外交の先に、6グローバルご近所の誕生ー大塚モスクの支援活動とネットワーク、東京下町のモスクから、日本のモスク設立と大塚モスク概観、大塚モスクの活動と社会的支援、海外支援の概要・アフガニスタン難民支援を中心に、海外支援のネットワーク、国内支援の概要・東日本震災被害地支援を中心に、国内支援のネットワーク、大塚モスクのネットワークとグローバルご近所の誕生、

宗教・社会の扉ーつながりと公共圏、7公共空間としての新たな部族社会ーヨルダンのディーワーンをめぐって、公共空間概念の射程、部族的な空間ディーワーンの出現、近代国家形成と部族社会、部族社会の変貌、カフル・マー村のディーワーン、部族社会と公共空間生成の契機、8聖なる血筋の効力ーインドネシアの預言者一族、近年の預言者一族ブーム、ハビーブ関係書籍・雑誌の出版、メディアでの展開、聖者祭など伝統的な行事との関連、預言者一族の価値は何か、9名前のないアラブ人ーフランスの北アフリカ移民、ポストコロニアルズム不在のフランス、フランスの移民の概要、政治的存在たることを許されない移民たち、ポストコロニアルな異議申し立て、ポストコロニアルなフェミニズム、10メディアでつながる人々ー共同体行意識の変容、メディアと共同体意識、ラジオが促した二種類のナショナリズム、テレビと国民意識の強まり、衛星放送時代と共同体意識の多様化・複雑化、インターネットの影響、メディアと社会が織りなす中東のこれから、11母語でもない外国語でもない言葉ーアラブ人とフランス語、中東のフランス語、東アラブ地域とフランス語のせめぎ合い、レバノンのフランス語話者たち、ダイグロシア状況と限定的なバイリンガリズム、アルジェリアのフランス語話者たち、変わりゆくフランス語使用のあり方、12世界は神とつながるモノにあふれているーマテリアリティとイスラーム、宗教をモノから理解する、クルアーンを伝えるモノ、モノをどのように理解するか、モノを通してイスラームを理解する、

経済・産業の扉ー石油の先にあるもの、13資源をめぐる共生ー雨乞い儀礼と聖者命日祭から考える、資源を分かち合う掟としての文化、自然環境の変動への対応として雨乞い儀礼と聖者命日祭、資源をめぐる異民族間と異種間の共生、14変貌するオアシス農業ー市場経済とナツメヤシの品種多様性をめぐって、ナツメヤシとオアシス農業、オアシスの水、ナツメヤシの品種多様性、商業栽培化に伴う品種多様性の低下、オアシス農業の現代的様相、15石油を輸入する産油国ー新時代を迎える中東とエネルギー問題、中東を取り巻くエネルギー情勢の変化、エネルギー生産国としての中東、エネルギー消費国としての中東、持続可能なエネルギー利用をめざして、16宗教がツーリズム出会うときー観光資源化する宗教遺産、市場経済下の宗教とツーリズムの解逅を考える、中東地域における宗教資源の三つの流動化をみる、所有する宗教資源から利用する宗教資源へ、宗教がツーリズムと出会った先に、17変わるハラールー科🄬護仰会合をいか闘志手レファー食の安全と産業化の先で、ハラルの紐解き方、ハラールとはラームという二分法への理解、グローバル化時代の東南アジアのハラール認証、現代中東における食とハラール・ハラールの境界、認証制度の問題とムスリム理解への課題、18新しい経済を構想るーポスト資本主義とイスラーム、ポスト資本主義の夜明け、フィンテックにおける脱集権制と追跡可能性、イスラーム世界にポスト資本主義の原風景を見る、イスラーム経済の再興とポスト資本主義的転回、

政治の扉ー現代中東・イスラーム世界を知るために、19制度の裏に潜むものー多様な選挙と政党、選挙と政党への制度論的アプローチ、非アラブ諸国・イスラエル・トルコ・イラン、アラブ共和国諸国・レバノン・イラク・チュニジア、アラブ王制諸国・モロッコ・クウェート、20イスラーム過激派はいかに勃興したかー政治変動とテロの間で、9・11事件の世界的衝撃とテロ対テロの時代、分水嶺としての1979年、自爆テロの始まり、アルカイダの広がり・ISの登場、21聖地の紛争とは何か―エルサレムをめぐる政治と宗教、パレスチナと聖地、聖地の紛争・多面的・動態的理解に向けて、聖地をめぐる紛争・宗教的・民族的シンボルとしての価値と政治的動員、聖地における紛争・領有権・管理権の問題と日常的な変化、22紛争の断面図ー宗派対立の虚像と実像、宗派の違いと宗派対立の違い、宗派対立の背景・宗派主義の現代性と国家の役割、宗派対立の展開・宗派主義の政治社会学、23難民危機を振り返るーシリアの変貌と海を渡った人々、長期化したシリア紛争と難民、紛争前のシリア、危険な海を渡る難民たち、難民危機とシリア難民、行き場を失う人々、24民主的な中東を目指してーイスラームと民主主義、アラブの春以後の民主主義の危機、イスラーム主義者による民主化要求、イスラームと民主主義という問題設定、当事者による試行錯誤を通じて、

文化・精神の扉ーイスラームから現代社会、25差異と共に生きるーイスラームにみる共生の知恵、共生の多義性と多文化共生、イスラームにおける共存、スーフィズムにおける共生、存在一性論にみる共生、諸宗教の一致説にみる共生、26現代医学に挑戦するイスラーム法ー生命倫理と信仰、生命科学とイスラームの世界観・死生観、人間に魂が宿る時期を重視するイスラーム解釈、臓器移植医療と幹細胞研究におけるイスラーム法的見解、死の定義の変化に向き合うイスラーム、アツラーの代理人としてのムスリム人生、27子のない人生を歩むー不妊治療ともう一つの夫婦のかたち、不妊治療という可能性、親になって一人前の社会、キャリア女性が語る不妊と不妊治療、孤独と希望の在り方、28格差是正の処方箋ー定めの喜捨ザカートの発展、格差の拡大とイスラームにおける処方箋、ザカート法学規定と初期イスラーム世界における公共・社会的性格、インドネシアにおけるザカート概念の変容、国家によるザカート制度化とイスラーム的市民社会の展開、コロナ禍での慈悲の困難さと新しいデジタルな寄付、29障害と支援ーイラン・イスラーム共和国の脊髄損傷者をめぐって、障害と支援を考えるために、北アフリカ・中東の脊髄損傷者、イランにおける脊髄損傷者」をめぐる状況、イランにおける脊髄損傷者の事例、慈悲の対象か権利の主体か、30響きあう異なる声ー多言語世界アイデンティティ、束としてのアイデンティティ、出自や民族による紐帯をつくる・地域的な言語意識、国家を超えて紐帯をつくる言語意識、出自・民族を超えて紐帯をつくる言語意識、多重なアイデンティティをつくる言語意識、表現者として言語を選ぶ、中東の人々のアイデンティティを知りたい方におススメ、

感想

中東は古い歴史と広大な地域を含み、人々は集団的に個人的にアイデンティティの成り立ちをしている、ヨルダンのディーワーンに注目したい、

まとめ

歴史の扉ー日本と中東、宗教・社会の扉ーつながり、経済・産業の扉ー石油、政治の扉ー現代中東、文化・精神の扉ー現代社会に分けイスラーム世界の豊かさを考察、

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